SIMPLE

シンプリストになりたいのです

映画・ペンギンハイウェイ

あまり順位というものをつけるのは好きではありませんけれど、もし作家で誰が一番好きか?という答えを出すのであれば、迷いなく森見登美彦さんをあげると思います。すべての著書を拝読したわけではないのですけれど、読書が楽しいと思うようになったきっかけは森見さんで、たぶん私にとっての特別は生涯変わらなそうです。

森見さんの作品はメディアミックスする際、アニメとの親和性が非常に高いように思います。ファンタジーでへんてこりんな世界なのに、読んでいて光景がまざまざと浮かぶから、アニメ化されても違和感があまりないのですよね。

そんなわけで森見さんの小説をアニメ映画化した作品「ペンギン・ハイウェイ」を見ましたので、感想をネタバレ交えて綴っていこうと思います。

あらすじ

主人公のアオヤマくんは小学4年生。勉強熱心で努力を怠らず、気になることはとことん研究できる、そんな男の子。通っている歯科医院に勤めているお姉さん(特に胸)が気になるお年頃です。

そんなアオヤマくんが住む街では突如、アデリーペンギンの群れが出現するという怪事件が発生します。海がない街ですからどこからやってきたのかもわかりません。それに車にひかれてもへっちゃらで、何も食事をとりません。そしてアデリーペンギンは街から離れてしまうとゴミの姿に変身してしまうのでした。ペンギンの正体を掴むため、アオヤマくんは「ペンギンハイウェイ研究」という名前を付けた研究を始めます。

アオヤマくんは「ペンギンハイウェイ研究」以外にもさまざまな研究をしています。「お姉さん」の生態を研究していたり、「プロジェクト・アマゾン」ではその街の水源がどこにあるのかを調べてみたり、「妹わがまま記録」では妹から投げつけられた無理難題を記録しています。

クラスメイトで冒険仲間のウチダくんと一緒にとある冒険をしていたときのこと。スズキくんというずいぶんとわんぱくなクラスメイトが舎弟の2人を連れてやってきました。すぐさま逃げ出すアオヤマくんとウチダくんですが、残念なことにアオヤマくんは彼らにつかまって自動販売機に拘束され、そのまま放置されてしまうのでした。

しばらくして、そこにお姉さんが現れます。なんとか助け出されたアオヤマくん。そして、お姉さんが缶ジュースをアデリーペンギンへと変身させるところ見てしまったのです。「ペンギンハイウェイ研究」と「お姉さん」の研究がつながります。

アオヤマくんのクラスにはハヤモトさんという女の子がいます。お父さんは大学の先生をしていて、彼女も小学4年生にして相対性理論の本を読むほど研究熱心な女の子です。チェスが得意で、クラスでは誰も勝つことができませんでした。しかし、アオヤマくんが勝負に勝ったことでハヤモトさんはアオヤマくんに秘密を共有します。

アオヤマくんが通う学校の近くには森があり、そこには「銀の月」という噂がありました。なんでもその月を見てしまうと、病気になってしまうという怖い噂です。なんとその噂の元凶はハヤモトさんだったのです。

ハヤモトさんはアオヤマくんとウチダくんを連れて、森の奥へと進んでいきます。広い広い草原の中心には、謎の球体が浮かんでいたのです。ハヤモトさんはその球体が他の人に見つからないように、噂をながしていたのです。そして謎の球体に”海”と名前をつけ、研究をしていました。そしてアオヤマくんに共同研究をしないかと提案するのでした。

ちょうど夏休みにはいったことで、アオヤマくん、ウチダくん、ハヤモトさんは研究を進めていきます。やがて、アオヤマくんはお姉さんと”海”とペンギンに奇妙な関連性があることに気が付くのでした。いったいそれらは何なのか…?謎は解明されるのか…?

感想

まず、とても面白かった!作画もとても美しく、凝られているなぁと思うようなシーンも。なにより物語も構成がとてもよくて、ワクワクドキドキさせてくれるような作品だと思います。

個人的に違和感があったのは吹替キャストくらいでしょうか。主演のアオヤマくんや、子ども達はとてもよかっただけに、ところどころ「んー…違和感」と思うキャラクターもおられまして。そこが残念です。下手というわけではないんですよ。でも、キャラと声があってないというか、なんというか。ま、こればかりは好みの問題ですよね。

原作小説はまだ途中までしか読んでいないのですけれど、これは原作も読んでみて、原作と映画の違いを楽しんだり、”行間を読む”作業をしたいなぁと思いました。

この作品は子ども向けということですけれど、個人的には子どもよりも大人が楽しめる作品なんじゃないかなと思います。映画って何層にも層があって、パッと見てわかる表面の部分があって、さらにその奥に「これはあれを表していて」という考察して楽しめる部分があって、それが何層にも重なっているんだと思います。

となりのトトロ」はトトロがでてきてワクワクとか、猫バスがでてきてドキドキみたいな表面の子どもが楽しめる部分と、その奥に きっとこの家は…とか、さつきちゃんがこうしているということは…とか考察できる層があって、大人は懐かしさであったり、そういった考察部分であったりを楽しめるんだと思うんです。

アオヤマくんはお姉さんのことが気になっていて、特にお胸が気になって仕方ありません。1日のうち30分くらいはそのことを考えてしまい、研究してしまうくらいには。表面だけ見れば、そういった表現に対して、いやらしいとか気持ち悪いとか女性蔑視だ!とか思ってしまうところかもしれません。けれど、もしそれが早熟している子どもであるということを表しているとしたら?彼なりのませた見栄の1つでもあるとしたら?

実際にはどうかはわかりませんけれど、森見さんの小説も何層にも重なっているような表面だけではない作品を書かれる方です。そういったところを小説から、さらに読み取れたらなと思います。

昔からいるよ。ここは地球だもの。本当に遠くまで行くと、元居た場所に帰るものなのよ。

(作中より引用)

わかったようで、わからない。面白いけど怖かったり変だと思うところがあったり。それを考える余白のある映画なのかなと個人的には思っています。

ちなみにペンギンハイウェイとはペンギンが海から陸に上がるときに決まってたどるルートのことをいうのだそう。またひとつ勉強になりました。

今回はこの辺で❀次は何をみましょうかね。

 

本・リカバリーカバヒコ

青山美智子さんの『リカバリー・カバヒコ』を読了いたしましたので、その感想やあらすじなどをネタバレ交えて綴っていきたいと思います。

リカバリー・カバヒコのあらすじ

5階建ての新築分譲マンション、アドヴァンス・ヒル。その近くにある日の出公園には古くから設置されているカバのアニマルライドがあります。名前はカバヒコ。

ただ乗るだけの、よくあるアニマルライドだ。茶色に近いようなくすんだオレンジ色で、それもところどころ塗料が剥げている。地のコンクリートがむき出しになってまだらな灰色になっていたが、カバなので違和感はない。

楕円の大きな瞳はちょっと上目遣いで、黒目も部分的に剥げているせいでなんだか漫画みたいな涙目に見えた。口がにいっと横に大きく広がり、端っこが上がっている。上向きの鼻は盛り上がった丘のてっぺんに離れて鎮座し、なんとも間の抜けた、あきれるほどのんきな表情だった。

(P14より引用)

カバヒコには、怪我や病気など自分の治したい部分と同じところを触ると回復するという都市伝説がありました。

すっと人差し指を立て、雫田さんは言った。

「人呼んで、リカバリー・カバヒコ」

リカバリー?」

「……カバだけに」

(P17より引用)

アドヴァンス・ヒルに越してきた人々は、それぞれの問題をカバヒコに打ち明けるのでした。

ここからは各章ごとに触れていきたいと思います。

奏斗の頭

それまで住んでいた街を離れ、高校進学のタイミングで都心寄りの新築分譲マンションであるアドヴァンス・ヒルに越してきた奏斗一家。それまではのんびりとした公立中学に通っていて、授業を聞いているだけでテストの成績は優秀でした。ですので奏斗は自分は頭がいいのだ…と思っていました。

けれど高校に進学してからそれは一変してしまいます。授業にはついていけないし、テストも平均点を下回った点数ばかりをたたき出してしまいます。すべての点数と個人順位が書かれた紙を見てみると、42人中35位という結果でした。母親には平均点が低かったんだよとなんとかごまかしつつも、成績不振を原因に自分に自信をなくしてしまいました。

そんなある日、マンションの近くに日の出公園という小さな公園を見つけます。無人の公園にふと奏斗は足を踏み入れました。公園にはブランコやすべり台などのいかにも公園らしいアイテムのほかに、カバのアニマルライドがありました。よくみてみると、カバの後頭部には油性マジックで「バカ」と書かれていたのです。心を痛めた奏斗は、翌日プラモデルの塗料であるラッカーで落書きを塗りつぶそうと思いつきます。

翌日、公園には先客がいました。先客は奏斗と同じ学校の制服を着ています。よく見ると、彼女は同じクラスの雫田さんであることがわかりました。気まずさを感じ、引き返そうとしたとき二人の目が合いました。

雫田さんは気さくに奏斗に話しかけ、奏斗にカバのアニマルライドの都市伝説について話します。そして奏斗はカバヒコに成績不振の状況を打破できるようにお願いするのでした。

「頭脳修復、たのむよ、カバヒコ!」

(P19より引用)

 

第一章の主人公奏斗。彼は自分はできる人間だと思っていたけれど”井の中の蛙大海を知らず…”と言いましょうか。広い世界を知って、自分の自尊心が傷ついてしまったり、それによってやる気を失ってしまったり…と思春期の少年らしい物語です。

「ひどいな。バカって書かれてる」

僕も一緒に、その文字をのぞきこむ。

「そうなんだよ。こすってみたけど、油性ペンみたいで消えなくて。上から塗ればいいかなと思って、プラモデルに使う塗料、似たような色を持ってきたんだけど」

僕はリュックからラッカーを取り出した。透明のボトルから見えるそのオレンジ色は、カバヒコと合わせてみるとずいぶんと明るかった。これだと、逆にそこだけ目立ってしまいそうだ。それに。

「……上から何か塗ったって、その下にバカがあると思うとちょっとせつないな」

僕はそう言って、ラッカーを下げた。

消すのと、隠すのは違うのだ。そうやってごまかしても、なかったことになんてならないのだ。

(P23より引用)

雫田さんとの会話や両親との会話をきっかけに、自信や やる気を取り戻していく奏斗の姿がとても眩しいお話でした。男女の友情の芽生えというか、とにかく眩しい!青山ワールド!といった感じです。

紗羽の口

半ば強引に夫が決めた新築分譲マンション、アドヴァンス・ヒルに越してきた紗羽一家。紗羽は専業主婦をしていて、娘のみずほは幼稚園の年長さん。やっとのことで見つかった編入先の幼稚園は何かと規則の多い幼稚園でした。アドヴァンス・ヒルのあるエリアでは、マレーという大型スーパーの前にあるロータリーが通園バスの停留所となっています。

紗羽はみずほの手を引いてその停留所に向かいます。そこではママ友3人がすでにそろっておしゃべりをしていました。子どもたちを見送ったあと、お迎えの時間までマレー内にあるファーストフード店「サマンサ」でお茶をするということが度々ありました。本心では家事をするために断りたい。けれどそうすると自分がはぶられてしまい、さらにはみずほまで仲間外れにされてしまうのでは…と心配になり、断れずにいました。おしゃべりの内容は中身のない噂話ばかり。紗羽は日に日に、適当な相槌をうつことだけ上達していくのでした。

そんななかで絹川さんというママさんの話が話題に上がります。絹川さんは年長の男の子を送りに来ているのですが、挨拶以外の会話はありません。いつも背筋をピンと立っていて、なにやら仕事をしているようで、サマンサへも当然来ることはありません。そんな絹川のあることないことを想像し、ママ友たちは噂話というていの悪口に花を咲かせるのでした。

この「ママ友ごっこ」もあと半年。あと半年の我慢だ、と思っていたところでちょっとしたトラブルからママ友たちから仲間外れにされてしまいます。みずほは今のところ仲間外れにされていないようですが、あからさまに自分が彼女たちに無視されていることがわかります。

紗羽は娘のみずほを出産するまでは全国チェーンのファッションビルでショップ店員をしていました。コンテストで接客が優秀であると表彰されたこともありました。その頃は心からいえた「ありがとうございます」が今は「ありがとう」の意味が「すみません」になってしまっていました。仕事に戻りたいけれど、みずほが3歳になるまでは…と思っているうちにブランクが怖くなり、みずほが5歳になっても戻れないでいたのです。

とある日曜日、みずほは夫に託して一人買い物にいくことになり、ついでにクリーニング屋にワイシャツやブラウスなどを持っていこうと思い立ちます。日の出公園のすぐ近くにある”サンライズ・クリーニング”はいつもベリーショートの白髪のおばあさんが店番をしていて、仕上がりに少し時間はかかっても、丁寧な仕事で何より安いということで紗羽の行きつけになっていました。

店先で店主であるおばあさんと、他の客と話していると、ひょんなことからカバヒコの都市伝説のことを聞かされるのでした。

私は彼を呼んだ。そしてそっと、にいっと笑っているみたいな口を触る。

カバヒコ、お願い。ちゃんと話ができた頃の私に戻して。

ママともたちとの関係を、修復して。お願い。お願いします。

カバヒコはただ、やんわりとほほえんでいる。私はカバヒコの口を何度も何度もなでながら、涙をにじませた。

(P86より引用)

 

第二章の主人公となる紗羽。ママ友問題であったり、専業主婦であるがゆえの葛藤であったりを描いている物語でした。

個人的に一番、わかるわぁ…と共感したのはこの章でした。私も2022年9月末に図書館司書を辞め、それ以降はずっと専業主婦で仕事に就いていません。夫は私の体調面や精神面からこのまま専業主婦でいいと言ってくれていますが、それでもやはり焦燥感と言えばいいのか、このままでよいのだろうか、働けるのに働いていないというのはよくないのではないだろうか…と考えてしまうこともあります。子どもがいるわけではないから余計にそう思うのかもしれませんね。

私は、ちゃんと話せる自分に戻りたいと思っていた。

でもそれは、単に「たくさんしゃべれる」ということではなかったのだ。

本当の「話せる」って、「必要なことをきちんと伝えられる」ことなんだから。

(P90より引用)

紗羽がどんなふうに変化していくのか、とても暖かい気持ちで見ることができました。

ちはるの耳

大学卒業後、ブライダルプロデュースの会社で3年間勤めていたちはる。やっとウェディングプランナーとして認められてきたところで、ストレスが原因で”耳管開放症”という病にかかり、休職することになりました。痛みがあるわけでも、音が聞こえないわけでもありません。ただ自分の声がくぐもった耳の中でまるで反響するように不穏に響くのです。もともと細身であった体形も、今は身長160㎝に対して30㎏台にまで落ちてしまいました。

ストレスの原因はわかっていました。同業の他社から半年前に転勤してきた澄恵という女性です。ハキハキと物を言いえ、スピーディに動ける澄恵の成約率は、圧倒的にちはるより上だったのです。もちろんそれで病気になったというわけではありませんが、彼女の存在によってちはるの心に余裕はなくなってしまったのでした。

もう一つの原因は同期の洋治でした。洋治は物腰が柔らかく、人当たりのいい人でしたが、そのぶん本心がつかみきれない人でもありました。彼はちはるが休職してからも、時々連絡をよこしてくるのです。そんな優しさや笑顔の裏で、誰かを傷つけているということをちはるは洋治に言えないでいたのです。

ちはるは両親が購入した新築分譲マンション、アドヴァンス・ヒルに一緒に暮らしていました。ある日、父がスーツをクリーニングに持っていかなくてはいけなかったことを失念していたといわれます。クローゼットに押し込まれ、皺だらけのスーツはクリーニングに出した方がよさそうです。

ちはるは散歩もかねて、サンライズ・クリーニングにもっていくことにしました。スーツを預けたあと、その足で日の出公園に向かいます。公園には先客がいました。紗羽とみずほです。同じマンションで挨拶をしたことがあったので、顔を覚えていたのでした。みずほはブランコを漕ぎ、紗羽はカバのアニマルライドの背に腰を下ろしていました。ちはると紗羽の目が合うと紗羽は好意的な笑顔をちはるに向けます。そしてそのまま立ち去るわけにもいかず、ちはるは公園へと足を踏み入れるのでした。

そこでちはるは紗羽からカバヒコの都市伝説のことを教えられます。

「……樋村さん(紗羽)も、どこか」

私が曖昧に言葉を濁しながら問うと、樋村さんは遠くを見るようにしてふっとほほえみ、なんだか楽しそうに言った。

「うん、治したいところをカバヒコにリカバリーしてもらった。でもちょっと良くなったからって油断してるとぶり返したりするから、こうやって時々、触りに来るの」

メンテナンス、ってことかな。

(P117より引用)

紗羽とみずほを公園から見送ったのち、ちはるはカバヒコの前にしゃがみこみました。カバヒコの耳に手を伸ばし、そっと、そっと撫でていると、なぜだかカバヒコ自身が耳の不調に苦しんでいるような、そんな錯覚に陥りました。

つらいね、しんどいね。かわいそうに。

何度もなでながら、胸の奥からせつない想いがこみあげてきた。

会社で起きた、つらかったことが次々に思い出される。

(P118より引用)

そしていろいろな思考を巡らせる中で、自分の醜い感情に気が付いたのでした。

 

第三章の主人公となる ちはる。人間関係のトラブルや仕事のストレスがまるで雪のように降り積もって、気が付いた時にはもう身体が悲鳴をあげてしまって。耳の不調は行ったり来たりでいつまでも回復しない、回復するのかもわからないという焦燥感。

人間関係のトラブルって、自分では「逃げる」か「立ち向かう」以外の対処法はないんですよね。他人の感情や行動をコントロールすることなんて、人間にはできませんから。コントロールできないからこそつらくて、逃げたとしても立ち向かったとしても、どちらにせよそれを乗り越えるのって簡単にできることではないと思うんです。そういった”ままならないこと”とゆっくり向き合うという物語でした。

ここですっきり完結するわけではなくて、これから…という感じで終わるのが個人的によかったです。身体の不調のことも、心の不調のこともそう簡単に解決するわけではありませんから。少しずつ、少しずつ良くなっていくよという希望があっていいなぁと思いました。

勇哉の足

父親の本社勤務が決定したことをきっかけに、新築分譲マンションのアドヴァンス・ヒルに越してきた勇哉一家。それを機に、小学校を転校することになった勇哉。新しい学校は学校行事がとにかく多くて、月に1度は何かしらのイベントがあるのでした。

そして11月のメインイベント…それは勇哉が大嫌いな「駅伝大会」でした。ただ全員参加というわけではなく、クラスから3人ずつランナーが選出され、6学年が縦割りになった組対抗のレースだそうです。運動が苦手な勇哉は絶対に選手に選ばれたくはありません。3人のうち2人は立候補ですぐに決まりましたが、あと1人がどうしても決まりません。そこで担任の先生は、明日くじ引きをして決めましょうといってその場は解散するのでした。

そして翌日。勇哉は家の薬箱から湿布を盗み出し、それを足首に張り、足を引きずりながら登校しました。そしてくじ引きが自分に回ってきたとき、先生に捻挫していると嘘をついて駅伝メンバーから外れることに無事成功したのでした。

それからすぐに怪我がなかったことにするわけにはいきませんので、足を引きずった生活を続けていた勇哉。2日ほど、そんな生活をしていたら本当に足が痛くなってきてしまったのです。地面に足をつけるとズキズキと痛み、ふくらはぎや膝まで痛むようになりました。病院にいっても原因はわからず、セカンドオピニオンを受けましたがそれでも治りません。また先生によって言っていることが正反対でどうしたものかと頭を抱えることになるのでした。

病院からの帰り、お母さんが思い出したようにクリーニング屋に寄っていくといいます。サンライズ・クリーニングでは店主のおばあさんと1人の女性が談笑しているようでした。その女性は見覚えのある女性です。同じマンションに住むちはるという女性でした。

お母さんに促されちはるに挨拶をし大人同士の談笑が始まります。ふと勇哉の歩き方から足を怪我しているのかと店主に聞かれます。お母さんは原因がわからないけれど足が痛いようで…と勇哉の状況を簡単に説明すると、店主はカバヒコの都市伝説のことを勇哉とお母さんに伝えるのでした。ちはるに案内されてやってきた日の出公園。カバのアニマルライドであるカバヒコが変わらずに立っています。

右の後ろ足に手のひらを当てる。

丸みがある円柱のそこは、しっくりと手になじんだ。カバヒコの足を何度もなでながら、ぼくはお願いをした。

どうか、どうか。ぼくの足を、元どおりに治してください。

どこも痛くなく歩けるように。

(P158より引用)

数日後、勇哉はお母さんに連れられて整体にやってきました。ちはるが行っている整体を紹介してもらったようです。整体の先生は、勇哉が片方の足をかばって歩くことで、体全体に歪みが出て、筋が張ったりしているのだろうといいます。

「体と心はすぐそばにあるんだけど、頭だけ、ぽつんと遠くにあるんだよ。勇哉くんの頭は、皮膚や筋肉が緊張しているのを、痛いって間違えてるんじゃないかな」

(中略)

「なにか、体や心がどうしてもイヤだなって思ってることがあるのかもしれないね」

そう言われて、ぼくはつぶやくように「走るのがイヤです…」と答えていた。

(P162-163より引用)

 

第四章の主人公 勇哉。自分がついた嘘が原因で、本当に嘘の状況になってしまい、そこからいろいろと学びを得る物語です。

体が緊張しているのは、ずるいことしたって罪悪感でびくびくしているからだ。頭が間違えちゃったんだ。

ホントのホントは、嘘なんてつきたくなかったんだ、そうだ、ぼくは…。

そういう自分のことが、イヤなんだ…。

(P170より引用)

どうしても嫌なことから逃げたくて、嘘をついてしまうことってありますよね。私も運動が苦手ですから、体育のマラソンや水泳が本当に嫌で嫌で。中学生のとき、部活中に足を10針ほど縫うけがをしたんですけれど、それ以降はいけないとわかっていながら、傷が痛むから…と嘘をついて体育の授業をさぼったり、なにかと理由をつけて学校を休んだりしたなぁ…と思い出しました。

でも回避することは悪いことばかりではありませんから。逃げていいことは逃げていいのだと、大人になってから気が付いたものです。嘘はできるだけつかない方がいいですけれどね。

そういった記憶をくすぐられたようで、なんだか居心地の悪さを感じつつ、でも愛おしいなぁと懐かしむことができる物語でした。

和彦の目

都内の出版社である栄星社に勤務して30年。学生の頃から念願だった情報誌編集の職に就き、今では月間情報誌「ラフター」の編集長を勤めている和彦。数年前から進行していた老眼が最近の悩みです。

仕事を終え、妻の美弥子と保護猫のチャオが待つ自宅を目指しますその前に少し寄り道した場所、それはサンライズ・クリーニングでした。夜遅くでシャッターの閉じられた店舗の二階、居住スペースとなっている部屋に灯がともっているのを確認し、そのまま日の出公園へと足を向けるのでした。

自身の母親であるサンライズ・クリーニングの店主。気が強く、快活でよくしゃべる、よく働く母と、和彦は折り合いが合わずに喧嘩が絶えない親子でした。和彦は就職を機に実家を離れ、それ以降は実家に寄り付くことはなく、妻の美弥子を紹介して以来でした。そのまま月日が流れ、和彦自身も老いを感じるようになり、また妻の美弥子の両親が美弥子の兄夫婦と同居を始めたことで母のことが頭をよぎるようになりました。そして美弥子に事情を説明し、母との同居を視野に入れるようになりました。けれどあまりに距離ができていましたから、突然一緒に暮らすというのは難しいはなしです。そこで近くのアドヴァンス・ヒルに越してきたのでした。

夜の日の出公園は無人で、遊具たちが静かに並んでいます。その中にカバヒコの姿を認めた和彦。カバヒコは、和彦が子どものころに設置されたアニマルライドだったのです。和彦は遠い記憶に思いを馳せます。

「この子はね、和彦のためにやってきたカバヒコっていうんだ。あまえの一番の味方だよ。すごい力を持ってるんだよ。自分が痛いのと同じところを触ると、治っちゃうんだから。人呼んで、リカバリー・カバヒコ!」

俺が戸惑っていると、母さんは突然ニヤリと笑い「……カバだけに」と補足した。リカバリーとカバをかけているのだ。それを聞いて俺は、ぷっと吹き出した。

すると母さんは俺をすっぽり抱きしめ、「だからもう、大丈夫!」と言った。

カズヒコの味方、カバヒコ。小学生だった俺にも、母さんが即興でこしらえた作り話だとすぐにわかった。

ただ、そんなホラ話の中にあふれんばかりの愛情を感じ取っていた。それがすごくうれしかったので、以来、カバヒコは俺の相棒となった。

しかし、俺もカバヒコも、年をとった。

……親子関係をリカバリーするために、戻ってきたのにな。

(P194-195より引用)

 

最終章の主人公は和彦。これまでのすべての章で出てきたサンライズ・クリーニングの店主の息子がここにして登場です。親子関係の修復って、これまた難しい問題ですよね。34歳の若造が…と思われそうですが、まぁうちの実家もいろいろとトラブル続きです。だからこそ和彦の葛藤はとても理解できます。年老いた両親とどう向き合っていけばいいのかとか、いろいろね。

「私、チャオと暮らし始めてつくづく思うの」

チャオをなでながら、美弥子は続けた。

「与えるだけじゃなくて、受け取ることも愛情なのよね。相手を信頼して、ただ甘えるっていう。大人になればなるほど、そっちの方が難しくなるんだけど」

(P220より引用)

はてさてどんな形で親子関係をリカバリーするのでしょうか。ぜひ、読んでみていただければと思います。

よもやま話

今までいろいろな青山美智子さんの作品を読んでまいりまして。青山さんはもう、このスタイルで突き進むのだなぁ…と思いまして。違う作風も読んでみたいなと思っていたのですけれど、それも野暮なような気がしてきた本作。違うスタイルは他の方の著書で楽しめばいいだけですからね。

こういう安心感というか、実家に帰ってこたつに入ってゆっくりする…みたいな雰囲気も大切なのではないかと思う今日この頃です。

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個人的にいいなと思ったところは、カバヒコって結局何もしていないんです。ただそこにいるだけで、リカバリーなんてしていないんです。

本当はただのコンクリートでできただけのカバのアニマルライドです。けれど、そこに目と鼻と口があって、まるでアニミズムのように、みんなどこかそこから表情を読み取って、自身と重ねてみたりしているだけ。本来のカバヒコは傾聴すらしてくれていないのに、通り過ぎていく人々が話を聞いてもらったような気持ちになっているだけなんです。

神様やなにかの不思議な力で問題をリカバリーするというお話ももちろん素敵なんですけれど、本作はそうじゃない。カバヒコを信じたり願ったりすることで問題の本質に自らたどり着いて、自分自身や周囲の人々によって、問題解決しているところがいいなと思いました。

神様ってそれくらいの存在でいいと思ったりもします。いてくれるだけでいいんです。聞くでもなく言うでもなく、ただそこに”存在”してくれていれば。逆に言えば自分がいると信じさえすれば、目に見えなくてもいいわけですし、勝手にご神体を決めてしまってもいいんです。個人利用の範囲でしたらね。

暖かくなってきて少しずつ読書欲も戻ってきましたので、いろいろと読んでいけたらと思います。次は何を読もうかな。

 

本・和菓子のアンソロジー

今年の2月に和菓子をモチーフにした物語『和菓子のアン』と『アンと青春』を読みました。

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もうすっかり物語の世界に魅了されてしまいまして。今までデパートの地下フロアで見るのは洋菓子コーナーばっかりだったのが、すっかり和菓子コーナーも追加されています。物語もまだまだ続いていくようで、続編の3巻『アンと愛情』も近々読もうと思っています。

実はこの「和菓子のアン」シリーズ、アンソロジーも出ているそう。これもチェックしてみなくては!ということで、そちらについてネタバレ交えて綴っていこうと思います。

坂木司リクエスト!和菓子のアンソロジー

「そういえば、他の方が書いた和菓子のお話も読んでみたいですね」

すると編集者さんは、残念ながらあまり和菓子の話というのはありませんねと答えた。そこで私はつい「ないなら、書いてもらいたいなあ」と言ってしまったのです。

(本書 まえがきP7より引用)

読書家としても知られる『和菓子のアン』の著者・坂木司さんがおっしゃったこんな一言から生まれた『和菓子のアンソロジー』。和菓子をモチーフとした短編が10編、ぎゅっとお歳暮のようにつまったそんな1冊でした。

お品書きは以下の通り。

こちらの全10編です。実は皆さま名前こそ存じ上げているのですが、読んだことが一度もない初めましての方ばかりでした。アニメを見た…とか映画を見た…という方もおられますが、それはいったんおいておきまして。一気にこんなにもたくさんの人と出会えるなんて…アンソロジーってその辺の出会い系サイトよりも出会いがあるのでは…とか馬鹿なことを考えてしまいました。

それでは1つずつ触れていきましょう。

「空の春告鳥」坂木司さん

1つ目は坂木さんの「空の春告鳥」。こちらは『アンと青春』の第一章と全く同じものです。「飴細工の鳥」という言葉の意味を解明するためにいろいろ考えたり、自分を投影して思い悩んだり…みずみずしさと、どこか初々しい感じが何度よんでもたまりません。

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こちらは以前、深く触れていますのでこの辺で。

「トマどら」日明恩さん

2つ目は「トマどら」。

物語の主人公となるのは宇佐見という若い男性の警察官。彼は毎月贈られてくる とある贈り物に困らされていました。重みのある白い紙箱の中身は12個のどら焼き。ちょっとした問題解決をきっかけに送られてくるようになったのですが、それは一体どうしてか…という謎解きの物語。

謎解きという点では『和菓子のアン』と同様のテイストかと思いきや、主人公が警察官であったり、男性であったりということでまた違った空気感を味わうことができます。

季節の果物が入ったどら焼きがでてくるのですけれど、とてもおいしそうでして。タイトルのトマどらとはトマト入りのどら焼きのこと。いったいどんなお味がするのでしょうかね?

「チチとクズの国」牧野修さん

3つ目は「チチとクズの国」。

自殺しようとしている男性と、その父親の物語。この物語はこれ以上設定を語ってしまうと美味しい部分を食べてしまうことになるのでこの辺りで。親子の絆や、主人公の葛藤といった軸となる物語と、水まんじゅうがいい感じに絡んでいてとても面白かったです。

「真面目に正しく生きることはちっとも悪かないよ。そりゃあれだけ騙されたら人間多少はひねくれちまうだろうけどさ。それでも俺はおまえのそういうとこが好きなんだよ。そういうところってのは、つまり親友だから無条件に信じちゃうところな。救いの手を差し伸べた人をみんな良い人だって思っちゃうところな。家族を泣かせるかもしれないけどさ、自分だって泣くような目に遭うだろうけどさ、それでも俺はやっぱり思うんだよ。騙す人間になるより騙される人間になれってさ」

「馬鹿だよ」

ぼくは吐き捨てるように言った。

「騙される人間はただ馬鹿なだけなんだよ」

「うん、まあな」

父はうつむき頷いた。

(P99より引用) 

お父さんの人情味あふれるキャラクターがとても好きです。こういう人が近くにいれば楽しいだろうなぁ…でも実の父親なら確かに恥ずかしいなぁ…でも好きだなぁって。

ファンタジーなのに、現実味たっぷりで、でも夢があって、そうだといいなぁとか思いながら楽しく読むことができるお話でした。

「迷宮の松露」近藤史恵さん

4つ目は「迷宮の松露」。

日々のあれこれに忙殺されそうになった主人公の女性。

たぶん、わたしはなにも考えたくなかったのだ。

(P119より引用)

いつまでという期限すら決めずにモロッコメディナにやってきました。メディナの入り組んだ街並みで迷子になっていれば何も考えなくていい。一日迷って、行き先を考えて、夜になったらお決まりのホテルでゆっくり休んで眠る。そんな日々を繰り返す。

そんなメディナで常連となりつつあるとあるカフェ。よく訪れているからという理由でサービスされたのは、デーツというドライフルーツになにかが挟まれたお菓子でした。ねっとりと甘いそのお菓子はまるで上等なあんこのようで、ふと祖母がお茶の時間に出してくれた松露というお菓子を思い出す。

「しょうろ?」

「松の露という字を書くんよ」

祖母は、包み紙を裏返して、そこにきれいな字で書いた。松露。

和菓子には美しい名前がついていることが多いけど、これもあまりにも美しい。あんこに白い蜜をかけたものを、松の露と呼ぶなんて。

(P131より引用)

容姿も美しく、常にしゃんと着物を着て、掃除洗濯と完璧にこなしていた祖母。そんな彼女と比べてしまう自分の存在。

「いいえ、違うんですよ。松露って、松の露じゃないんです」

「え…?」

「松露って茸なんですよ」

わたしは、ぽかんと口を開けて、彼を見た。

「茸…ですか?」

「そうです。その茸に形が似ているから、松露という名前がついたんです」

わたしはもう一度蓋をあけて、松露を見た。

「こんなふうに白くてきれいな茸なんですか?」

たとえば、ホワイトマッシュルームのような。

「いいえ、真っ黒でごつごつした不格好な茸です。味は最高においしいらいんですけど」

「松の根本に生えるから、松露と言うのよね」

(P140より引用)

美しいものだと思っていた松露が実は違ったと知る主人公はそこからまた新しい視点を得る…といったような優しいお話。全体的にしっとりとしていて情景が浮かんでくる素敵なお話でした。

近藤史恵さんはいつか読もうと思いつつまだ読めていない作家さんで、実は購入したけれど読んでいない本が何冊か。今回短編をかじってみて、とても口に合いましたので、積読も読んでみたいなぁと思います。

「融雪」柴田よしきさん

5つ目は「融雪」。

雪降る北国でも、ようやく寒さが少し緩んできた3月の半ば。今日もSon de ventというカフェで主人公の奈穂は営業を始めます。薪をくべて暖炉を温め、開店準備をしているとやってきたのは村岡亮介という男性。彼は地元の農業センターに勤める公務員で、カフェと有機栽培農家との間に入ってくれています。奈穂は涼介に好意を寄せているものの、そのままの関係性でいたい奈穂。ゆったりと時間が過ぎていきます。

その日の昼過ぎ、涼介は友人であり先輩の井村という男性を連れてランチに訪れます。農林水産省のお役人である井村は地産地消のプロジェクトの一環として、こちらにきていたのでした。和気あいあいとすすむランチ、デザートは少し早い苺を使った「泡雪羹」。そこから井村の過去の淡く、甘酸っぱい思い出が紐解かれ…。

1冊の中でもダントツでおいしそうなものがたくさん出てくるこちらの物語。私は泡雪羹をいただいたことがないのですけれど、機会に巡り合えたなら「ババロアより男前な口どけね」なんて言ってみたいものです。

それにしても北国のカフェ…憧れる!昨年見た『しあわせのパン』という映画であったり、この間みた『かもめ食堂』という映画であったり、こういうカフェが舞台となった作品ってたまりませんよね❀近々『食堂カタツムリ』を読む予定です。

yu1-simplist.hatenablog.com

この「融雪」は柴田よしきさんの著書『風のベーコンサンド 高原カフェ日誌』と続刊である『草原のコック・オー・ヴァン』が舞台なのかな?と思います。これはこちらも読んでみたいですね❀

「糖質な彼女」木地雅映子さん

6つ目は「糖質な彼女」。

人間付き合いがうまくいかず、大学に通うことができなくなってしまった主人公。昼夜逆転生活を送っていることを心配した母親が、半ば強引に連れてきたのは精神科の「ひきこもり相談室」。しかし主治医の先生は、2人になった瞬間に自分を罵倒してくるし、自分が好きなアイドルとの写真を見せびらかしてくるし。もう周囲のいろんなものが彼を貶めているような状況。イライラがつのって、つい母親を一人おいて、病院内を飛び出すも結局は迷子になる始末…。たどり着いたのは、見渡す限り人影のない、古い中庭のような場所。どうしたものかと思っていると、彼に一人の少女が声をかける。少女につれられてやってきた場所、そこは病院内の就労継続支援事業部。そこでは和菓子を作っているようで…。

和菓子といっても今回、題材となっているのは和菓子の制作について。どのよにして和菓子をつくるのか、そしてその作られた和菓子にどのように自分を反映するか。一見軽やかなお話のなかでもナイーブなテーマが詰め込まれていて、まるで求肥に包まれた餡のように食べてみないとわからないものでした。

ちょっと脱線しますけれど、私も和菓子をつくる体験をしてみたいなと思っておりまして。調べてみるとそういう体験教室もやっているようです。いつか体験することができたら、こちらでも報告できればと思います。

「時じくの実の宮古へ」小川一水さん

舞台となるのは未来の日本。そこは温暖化の影響で、生態系が激変し、まるで亜熱帯地方のような樹木や動植物が日本に生息しています。日本はどんどんと北上し、ところどころにゲーテッドシティはあるものの、それ以外の場所といえばマングローブや砂糖きびや葛といった緑に覆われています。

そんな日本で旅をする工次と父親。父親は仕事に誠実な和菓子職人でした。和菓子の「和」とは日本のことですが、その日本とは?それを表すお菓子とは一体なになのか?考えに考え抜いた結果、二人は「おかしの宮古」という場所を求めて、東北から南下し、旅をしてきました。

「なぁ工次。よく効く薬って、どんな薬だと思う?」

「薬?」工次は面食らって考える。「そりゃあ、苦い薬じゃないの。良薬は口に苦しっていうし…」

「そう思うよな。だが聞けよ、こんな話がある。むかぁしむかし、垂仁天皇に仕えた田道間守というおっさんが、病気になった天皇のために薬を取りにいった。死者の国への遠い旅だ。十年かけておっさんが取ってきたのは非時香果(ときじくのかくのみ)っつう、果物だったそうだ。…甘い甘い、菓子だったんだよ。これがお菓子ってものの起こりだとされる」

「それは…?」

話の意味を汲み取りかねて、工次は父の顔を見上げる。歌詞は景色を表す、甘いもの。それは当たり前すぎて、答えとして飲み込むには歯ごたえが足りない。

父は何も言わない。

「…それが、宮古のうまいお菓子なの?」

チョコが不思議そうに聞くと、父はあるといいなあ、と笑った。

(P250より引用)

道中増えるチョコとの3人の旅路の物語。

和菓子というモチーフからここまで壮大な物語が紡げるのか…!と、とてもびっくりいたしました。面白いと思ったのはもちろんですが、続きが読みたい!これで1冊読みたい!という作品でした。SFってあまり読んだことがないのですけれど、他の作品も気になるところです。

ところで先ほど引用であげた非時香果。一説によると、橘の実であったとされているそうで。以外と身近なものでこれまたびっくりしました。柑橘類があまり得意ではない私は橘の実も食べたことがないのですけれど『時を選ばず(非時)香る果物』って言われるととても気になるところ。いったいどんな香りがするんでしょう。

(以下URLより参照)

非時香果(ときじくのかぐのこのみ)bizenya.co.jp

「古入道きたりて」恒川光太郎さん

とある男性が体験した不思議な体験。釣りをしに山奥に入るも、大雨にふられて困っていると一軒の家を見つけます。そこで雨宿りをしていると家主の老婆の勧めでそのまま泊っていくことに。老婆によると、大昔から夏の満月の夜には「古入道」という幻や幽霊の類のなにかが現れるというのです。そして夜中に目を覚ました彼は、その古入道を目にするのでした。翌朝、老婆に古入道について質問するも、そういうものだという回答しか得られない。

「そりゃあ、もう、古入道っちゅうことくらいしかいえませんわ。すんませんけど、無学なもんでねえ。空に虹がかかるとか、春に桜が咲いたりってのと同じようなものなんです。夏の満月の夜には古入道が通過するんですわ。大昔からそうなんですわ」

(P276-277より引用)

ひとしきり古入道のことを話すと老婆は膳を運んでくる。そこには緑茶とおはぎが乗っている。

「夜船でございます」

「夜船というのは」

「牡丹餅のことを、おはぎといいますな?牡丹餅を、おはぎというのは、本当は秋だけなんです。牡丹餅いうんは、季節によって名前を変えるんです。春は牡丹餅。秋はおはぎ、夏は、夜船というんだって、わたしなんか、教わりましたがね」

「そうなんですか」

そんな話を、彼はとある男性にするのでした。そこで食べた夜船が人生で一番うまかった甘味だと…。

薄ぼんやりとホラーなのですが、全然後味の悪いものではなくて。例えば神様のお話を聞いて怖いと思わないように、『もののけ姫』という映画に出てくるシシ神様や、山犬たちに恐怖を抱かないように、うっすら、しっとりとした気配を楽しむことができました。ファンタジーが好きな人であれば、好まれるお味じゃないかしらん?と思います。個人的にはすごい好きです。

そういえば「夜船」についてですが、お恥ずかしながら存じ上げませんで。創作なのかと思い調べてみたのですが、なんと夏は「夜船」、冬は「北窓」というのですね。勉強になります。(下記URLより引用)

先日、いただいたのは牡丹餅。夏・秋・冬…と移り行く名前も含めて楽しみたいと思います。

hyoto.jp

こういうちょっとした知識をGETできるのもうれしいですね❀

「しりとり」北村薫さん

編集者の一人である向井美奈子さんと「わたし」の物語。向井さんの夫が最期にのこした不思議な俳句。その意味を探るのがメインとなるお話で、キーになるのは「黄身しぐれ」という和菓子です。

まるで実話のような、エッセイのようなそんなお話でどんどんと引き込まれてしまいました。和菓子の登場がまったく無理やりじゃないんです。こじつけ感が皆無なんです。「和菓子をモチーフとした物語ですか…そういえば以前、こんなことがありましてね」みたいな前置きが見えるくらい、すんなりと物語に入り込んでしまって自分でもびっくりです。

そういえば北村薫さんの著書が夫の本棚にあったと思いますので、今度借りて読んでみようかと思います。

「甘き織姫」畠中恵さん

ラストを飾るのは「甘き織姫」。

こちらも和菓子を絡めた謎解きのお話。伊藤はある日、新婚の若くて可愛らしくて料理の上手な妻と共に、自宅マンションで友人3人を迎えます。彼らは大学時代からの親友です。伊藤が彼らを読んだのには理由がありました。先日、御岳という同窓生から突然電話があったのですが、困ったことに無理難題を押し付けられてしまったのです。

御岳は顔だちもスタイルも抜群で家柄も裕福、おまけに頭脳も明晰、そして裏表のない性格で悪い人ではありません。けれど、ちょっと変わったオタク気質のある男性でした。そして御岳と友人達も、大学生で同じサークルで交流がありましたが、卒業して以来は年賀状だけの付き合いになってしまっていたのです。

御岳は好意を寄せる女性がいて、とある和菓子を送ります。そして、返事としてさらに和菓子が送られてきたのですが、その意味がわからないというのです。いったいどういった意味が込められているのか、伊藤に解明してほしいというのでした…。

『和菓子のアン』と同様の謎解きでありながら、また違った持ち味と言いますか、可愛らしいほのぼのとした世界観を楽しめる作品でした。御岳君のキャラクターがとてもよくって好きです、あ、でも身近にいたらぶん殴っているかもしれませんけれど。

よもやま話

はてさて、すべてのお話に触れてみましたが結構な量になりました。私が書いた分量に差はありますが、それは内容的に深堀しづらかったりして短くなっただけで長短の優劣はありません。どの作品もとても楽しむことができました。

これがもし出会い系サイトであれば、私は1人を選ぶことができずに、ひどく困惑したことでしょう。どのお話も違った味わいがありますから、それぞれですよね。

『和菓子のアン』シリーズを読んでからより一層身近になった和菓子。もともと三日月を食べていたり、餡つくりをしていたので興味はありましたが、それがどんどん深まっていくのを感じます。でも全然底が見えないんですよ。和菓子って本当に奥深くって、これは長く長く付き合って、こんな和菓子があるんだ…あんな意味が込められているんだ、そんな逸話もあるんだ…と生涯知っていければと思います。

3巻である『アンと愛情』も読むためのスタンバイはOKです。それまでに他にも読む本があるので少し先になってしまいそうですけれど、それでも年内には読めたらと思っています。次はどんな和菓子と出会えるのか、楽しみですね❀

 

 

映画・かもめ食堂

以前からタイトルをよく目にしていて、いつかは見よう見ようと思いつつ結局は見ていなかった「かもめ食堂」。今回、満を持して鑑賞いたしましたので、ネタバレ交えて綴っていきたいと思います。

あらすじ

フィンランドヘルシンキで「かもめ食堂」という小さな食堂をオープンした日本人女性のサチエ。けれどお客さんは全然で、通ってくれる客は日本文化に興味のある青年・トンミだけでした。トンミは日本アニメにも興味があるようで、サチエにアニメ『ガッチャマン』のオープニング曲について尋ねます。歌詞の序盤こそ思い出せるけれど、どうしてもその先が思い出せずに悶々とするサチエ。

立ち寄った本屋でも曲のことが頭から離れません。カフェスペースに移動してみると、斜め前に日本人観光客の女性ミドリを見つけ『ガッチャマン』のオープニング曲について尋ねると、なんと全部覚えていたのです。二人は打ち解け、一緒に暮らすようになり、またミドリはサチエが営む「かもめ食堂」を手伝うことになりました。

集客するためにはどうするかと試行錯誤を繰り返し、時にはトナカイやザリガニでおにぎりを作ってみたり、シナモンロールを焼いてみたり。そんなある日、ロストバゲージにあって困っていた女性マサコが来店し、仲間に加わるのでした。

淡々と、でもどこかほのぼのと営業が続く毎日のなかで、訳ありな人たちと紡ぐ日常の物語です。

感想

大きな起承転結があるというわけではなく、ただ淡々とほのぼのと続くストーリー。その中で、ちょっと心を打たれたり、笑ったり、温かい気持ちでみることができる作品でした。

かもめ食堂のメインメニューはね、おにぎりなんです

(作中より引用)

作中、いくつも出てくるおにぎり。鮭・梅干し・おかかの3種類。日本のソウルフードですよね。おにぎりといえば、私は『南極料理人』という映画が思い浮かびます。

南極観測隊に料理人として参加した男性(堺雅人さん)のお話。氷と雪に閉ざされ、寒すぎてウィルスすら生きていけない極限世界。そんな中で毎日のご飯を担当する料理人はとても大切なお仕事です。この作品に出てくる料理がね、もうどれもこれもがおいしそうなんですよ。特に推したいのが先ほどあげたおにぎり、そして一緒に食べる豚汁。そして後半出てくるラーメン。どれもありふれた、ごくごく日常のごはんですよね。でもそれがおいしそうで、おいしそうで。『かもめ食堂』でも『南極料理人』でもおにぎりを頬張るシーンはとても印象的でした。やっぱり日本人のソウルフードだからでしょうかね。私も食べたくなりました。

蛇足なのですが、海苔って日本人以外は消化が難しいと聞いたことがあります。ヘルシンキで食べた現地の皆様は大丈夫かしらん?と思って調べてみたら、焼き海苔は大丈夫なのですね。生海苔はほぼ日本人にしか消化できないんだそうな。

(以下URL参照)

toblef.com

「ねぇミドリさん、もし明日世界が終わっちゃうとしたら最後に何したいですか?」

『明日おわっちゃうんですか?』

「いや、例えば」

『えぇー…そうですね、何か…何かすごーくおいしいものが食べたいです』

「やっぱり?」

『え?』

「いや、私もね、この世の終わりってときには、もう絶対おいしいものが食べたいんですよ。とっておきの材料買ってきて。いっぱいごちそう作って。好きな人だけ呼んで。おいしいお酒飲みながらのんびりおいしい料理を食べて…」

(作中より引用)

サチエさんとミドリさんの会話から。よく、明日世界が終わったら…という、もしも話を耳にしますよね。そういうときに必ずセットで「食」が出てくるように思います。最後の最後に食べたいものって何だろうって、私もたまに考えるんですけれど、たぶん自宅でお吸い物と親子丼とかそういうありふれたものを食べそうだなぁ。でも一番大切なものは、何を食べるかというより誰と食べるかな気がしていて。きっと私は夫と食事をとることを希望すると思うので、夫が好きな唐揚げとかを揚げて食べるかもしれないなぁなんて思ったり。

凪良ゆうさんの『滅びの前のシャングリラ』や小川糸さんの『ライオンのおやつ』を読んだときにも同じことを考えましたが、環境が当時とは変わっていますので当然食べたいものも変わっていきます。こうした変化も楽しんでいきたいと思っています。

『いいわね、やりたいことをやっていらして』

「やりたくないことは、やらないだけなんです」

(作中より引用)

最後にこちらはマサコさんとサチエさんの会話。私もやりたいことをやるより、やりたくないことをやらないことの方がずっとずっと重要だと思って生きています。会いたくない人にはできるだけ会わないし、したくないことはできるだけしない。もちろんすべてをわがままにできるわけではありませんけれど、自分の指針のような感じです。そういったことを我慢するのもいいですけれど、投げ出して生きる人間が少しくらいいても、きっと世界は変わらずまわっていきます。大丈夫大丈夫。

BGMも最小限のこの作品。見終えて、あぁよかったなぁと浸って終わりかと思いきや。次の日、料理をしていて(パン生地をこねていました)、ふとかもめ食堂をBGMに流したいなぁ…と思いました。おすすめされている方が「かもめ食堂は何度でも見たくなるのよ、世界に浸りたくって」とおっしゃっている意味がなんとなく分かった気がします。

作中で、それぞれのキャラクターの背景を描きすぎないというところも個人的に好きです。最近は減ってしまっている、行間を読む作品。与えられた映像や、少ないセリフからきっとこういう背景なんだろうな…と推測はするけど、答えがあるわけではなくて。それくらいがちょうどいいなぁって思うんです。考える余白のある作品、また定期的に浸ろうと思います。原作も読んでみたいなぁ

 

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映画・ホームアローンシリーズ

この間、たまたまAmazonprimeで配信されている映画にどんなものがあるのかな…なんて思ってみていたらですね、とても懐かしい作品に出会いまして。そういえば幼いころに金曜ロードショーかなにかで見たけれど、きちんと見ていないということに気が付きました。

シーズンとはずれてしまいますけれど、それはまぁ気にせずに見てみました「ホームアローン」と「ホームアローン2」。今回はこの2作品についてネタバレ交えて綴っていきたいと思います。

ホームアローンのあらすじ

イタズラが大好きな8歳の少年ケヴィン。ケヴィンの家には親戚を含めて総勢15人もの人が集まり大盛り上がりです。なんと明日からは家族でシカゴからフランスのパリへクリスマス旅行に出かけるのですから、もう皆 準備に大忙し。ケヴィンは家族に構ってもらいたいようですが、誰もかまってくれないどころか、兄弟たちは自分のことをどんくさいとかなんだのと貶してくるのです。

夕飯は皆で宅配ピザを食べる…はずでした。しかし、ケヴィンの”チーズピザ”はいじわるな兄のバズによって食べられてしまいました。怒ったケヴィンはバズとの喧嘩が始まってしまいます。そして飲み物はこぼれ、机の上のピザは台無し、叔父さんのお洋服も汚れてしまいました。

家族たちは冷ややかな目でケヴィンを見つめ、ケヴィンの母もケヴィンを叱ります。そして屋根裏部屋のベッドでケヴィンを一人、寝かせることにします。納得のいかないケヴィンはもう家族なんていらないと言って、部屋にこもるのでした。

そして皆が寝静まった後、事件が起こります。なんと停電のせいで、セットしていたはずの目覚まし時計がリセットされてしまい、みんなが寝坊してしまったのでした。皆大慌てで準備をします。空港までのバスに飛び乗り、飛行機にもギリギリ間に合いました。

そんなとき。ケヴィンが屋根裏部屋から起床してリビングに降りてきます。もぬけの殻になってしまった我が家。うるさい家族が誰一人いなくなったことを喜びます。そして一人暮らしを満喫するのでした。

その頃、妙な胸騒ぎを覚えたケヴィンの母ケイト。フライト中の座席はまとまった座席ではなく、バラバラな座席で誰もケヴィンが居ないことに気が付いていないのです。ケイトは何かを忘れているような気がしてたまらなくなり、夫のピーターに相談します。鍵も閉めたし、ガスも大丈夫、あぁガレージを締め忘れたけれどそれも大丈夫さとケイトに諭します。そこでケイトは自分が前夜、ケヴィンを屋根裏部屋で寝かせ、今朝起こしていないことに気が付くのでした。

一方。ハリーとマーブという泥棒コンビはクリスマス休暇で誰もいなくなった家を狙って泥棒に入っていました。ひょんなことから、二人が泥棒であること、そして自宅が狙われていると知ったケヴィン。我が家を守るため、あの手この手で戦います。

ホームアローン2のあらすじ

ホームアローンから1年後のクリスマス休暇。ケヴィン一家はまたも旅行の準備で大忙し。今度はシカゴからフロリダ・マイアミに旅行にいくのです。昨年同様、バズと喧嘩して辺りをめちゃくちゃにしていまい、またも一人だけ屋根裏部屋で眠る羽目になります。

またまたトラブルが発生し、寝坊してしまったケヴィン一家。またもケヴィンを忘れて…と思いきや今度は大丈夫。ちゃんとケヴィンも一緒に空港に向かいます。

大急ぎで空港を駆け抜けていく、ケヴィン達。しかし、途中で立ち止まってしまったケヴィンは家族たはぐれてしまいます。そして、父と似たコートを着ている男性の後についていってしまうのでした。一家はたどり着いたマイアミ空港でケヴィンが居ないことに気が付くのでした。

その時、ケヴィンはというと、ニューヨークに着てしまっていました。窓からはニューヨークの摩天楼がそびえています。ケヴィンは1人、観光を始めます。たまたま父親の鞄を持っていましたから、お財布には旅行用の大金と、クレジットカードが入っています。観光中、TVCMでみたプラザホテルを見つけます。言葉巧みに受付係やベルボーイをだまし、ホテルで宿泊することに成功し、ルームサービスにリムジンカーにと満喫するのでした。

ケヴィンがいないことで、警察でケヴィンの行方を捜す両親。父親のクレジットカードが手元にないことに気が付き、盗難手続きをすることになりました。カードをどこかで使われると、所在地がすぐに判明するからです。

一方、リムジンカーを満喫しながらニューヨークの立派なおもちゃ屋「ダンカンのおもちゃデパート」に訪れていたケヴィン。レジで、経営者の男性からクリスマスの売り上げは全て小児病院に寄付するという話を聞きます。ケヴィンは商品の代金に加えて、寄付をすることにするのです。それに感銘を受けた男性は、レジに飾っていたクリスマスツリーの飾りを1つプレゼントしてくれるというのです。彼のお勧めは2羽で1セットのキジバトでした。1つは自分の手元に、もう1つを大切な人に持たせることで、永遠の友情の証になるというのです。

しかしケヴィンがホテルに戻る前、ケヴィンが使用したクレジットカードが盗難されたものであることにボーイが気づくのでした。そして同時に、その利用記録からケヴィンがニューヨークにいることを両親は知り、家族はニューヨークを目指します。

「ダンカンのおもちゃデパート」を出て、地図を見ていたケヴィンに怪しい2人組が近づいてきます。なんと2人は逮捕され、刑務所にいるはずの泥棒2人組 ハリーとマーヴだったのです。なんとか2人から逃げますが、ホテルでもボーイがクレジットカードが不正利用であることで待ち受けていたのです。ホテルからはなんとか逃げ出すことが出来ましたが、残念ながらハリーとマーヴにつかまってしまうのでした。

そこでケヴィンはハリーとマーヴが「ダンカンのおもちゃデパート」に強盗に入るのだと聞かされます。さらに逃げ出したケヴィンは、当てもなく通りかかった小児病院の前でダンカン氏が寄付することや、ハリーとマーヴの強盗計画の話を思い出します。なんとかして阻止しなければと決意したケヴィンは、再び2人組に立ち向かうことになるのでした。

ケヴィンは無事、「ダンカンのおもちゃデパート」を守ることができるのか?そして、2人組から逃れることができるのか…?

感想

ケヴィンはどのようにして家を守っていくのか…一体どんなイタズラが待っているのかを楽しむこの映画。ラストがどうなるのか…ということはさほど重要ではなく、家であったりおもちゃデパートであったりを守るために幼い少年が奮闘する姿が愛らしく、そして憎らしく、その過程を楽しむ作品だと思います。

1と2を見て、自分の中にあるホームアローン像は2作品がごちゃまぜになっていたのだということがわかりました。1でどんなことがあって、2でどうしてこうなったのかというのが今回見てみてやっと解りました。

1は思っていたよりも、まだイタズラがかわいらしくて、痛い痛いっ!と思うシーンもさほど多くはありませんでした。もっと痛い印象があったので、ちょっと一安心。これならいつの時代でも、笑ってみることが出来るなぁと。

あとケヴィンの家族について、もっと不快な家族だと思っていたんです。ですが今回みてみて、そこまで悪い人たちではないのだなと思いました。母親ももっとヒステリックな印象だったのですけれど、そこまででしたし、ケヴィンが居なくなってからの反応は「そりゃそうなるよね」といったものでした。いじわるなお兄ちゃんも、なんやこんやでいい面もあってね。客観的にみると面白味のあるかわいらしい家族だなと思いました。

2になると、ケヴィンの悪ガキ具合もイタズラの質もグレードアップしているようで、どの罠もとても痛そうでした…。夫と「この二人頑丈やな、よく死なないな」なんて話しながら見ておりましたよ。

どちらもコメディとして楽しむことができましたし、個人的には大満足。長く愛される作品なんだなぁと思いました。ただ痛いだけとか、ただ罠にかかっているだけだと面白くないじゃないですか、ちゃんと理由があって、ストーリーがあるからこそ愛され続けてきたのかななんて思います。

ちなみに、ホームアローンは3以降もあるそうでなんと5まで出ています。2021年にはリブート版も出ているそうで合計6作品もあるんだとか。個人的には2までで満足かな。ケヴィン役のマコーレ・カルキンは2までの出演ですし。

マコーレ・カルキンといえば、これまたたまたまNETFLIXをみていて気が付いたのですが、見ようと思ってウォッチリストに入れていた「リッチー・リッチ」。よく見ると、これまたマコーレ・カルキンが主演なのですね。気が付いていませんでした。これはご縁なのかしらん?ということで、近々みたいな…と思っています。見たいものって尽きないものですね。

 

 

おでかけ記録(小川町・お花見)

この季節、一番気になるものって何でしょう。学生さんでしたら入学式や新学年、社会人の方でしたら新年度とかなのでしょうか。

私がこの時期、心の8割を占めているもの。それは桜の開花状況です❀予定している来週末のお花見までに桜が開花するかな、逆に雨で散ってしまわないかな…そんなことばかり考えておりまして。今回は先日お邪魔したお花見について綴りたいと思います。

花より団子、あけぼの 小川店

埼玉県 中部に小川町という、「武蔵の小京都」と呼ばれる場所があります。昨年、お花見をかねてお邪魔した小川町。今年もやってまいりました。

まずお邪魔したのは、駅前にあるお団子屋さんの あけぼの さん。前を通りかかると元気な声が聞こえてくるような、そんなお店です。前回はお邪魔できなかったのですけれど、それが実は心残りだったのです。こういう地元に根差したお店は絶対おいしいはず。

そんなわけで購入したのが、みたらし団子。

購入したばかりのみたらし団子は、暖かくでとても柔らかいのがわかります。予定では、移動先でいただこうかなと思っていたのですけれど、これは今食べなくてはもったいない!ということで、近くのベンチでいただきました。もっちもちの食感と、あまじょっぱいタレ、そして団子の焦げた香ばしい香りがほのかに香ります。これはたまらない!

しかもこれが1本100円以下のお値段で購入できるというのですから驚き。これは小川町に来るたびに頂きたい一品です。ちなみにメニューはこのほか、おはぎや草餅、いそべ団子と甘味もたくさんありますし、お稲荷やおにぎり、ちょっとしたお惣菜など様々。それを買ってピクニックをしても楽しそうです!

武州めん

小川町に来たのは今回で3回目ですが、毎回お邪魔しているのが武州めん 本店さん。

busyuumen.co.jp

小川町で操業100年の武州めんさん。こちらの本店は15年前にできた店舗のようです。こちらにお邪魔するようになったきっかけは声優の杉田智和さん。自身のYouTubeチャンネルなどで武州めんさんのお話をされていて、いつか行きたいと思っていた場所なんです。初めて食べたときは、ガシガシとした麺にびっくり!それでも、やみつきになってしまって、こうして通うようになりました❀

今回いただいたのは、「きのこと肉汁うどん」です。3種類のきのこが入った贅沢なうどんです。お肉・ネギ・茸、そして麺、一口食べるごとに様々な味が楽しめますし、それぞれからでてきた旨味がたまらなく美味でした❀

夫が注文していたのはカレーうどん。お出汁がしっかりとしたおうどんだったようです。あとは二人でシェアする天ぷらの盛り合わせ。おナス、サツマイモ、かき揚げです。普段はおナスが苦手な夫も、こちらのおナスは大丈夫なようです。どれも野菜がとにかく甘いんです!つゆにつけたり、つけ麺のつゆにつけたりしておいしくいただきました❀大満足!

槻川親水公園

関東でお花見をする場所は、もうこちらで固定でいいかなぁと思えるくらい気に入ってしまった場所がこちらの槻川親水公園。小川駅からしばらく歩いた場所にあります。

咲き具合は5~8割くらいでしょうか。それでもとても美しい桜を愛でることができました。

ここの何がいいってね、長閑なんです。もちろん、桜の名所と言われる観光名所もとても美しいです。それも好きです。でも今はもっと心穏やかに桜を愛でたいのです。

川沿いに桜並木が続き、すぐそばの広場でお子さんが遊んでいたり、ご家族でレジャーシートを敷いてお弁当を食べながら桜を見ていたり。でもちゃんとそれぞれに余白がたくさんあって、それくらいの距離感がとてもすきです。今は護岸工事のために、一部入ることができないところもありましたが、それでも大満足の桜を満喫することができました。

熊谷小川秩父線を走る列車と桜。

良い感じに桜と列車を撮ることができました❀

実は今年のお花見でやってみたいことがあったんです。それは桜を愛でながら桜餅を食べること。関西の桜餅は道明寺、関東は長命寺と言って姿形が異なります。個人的には断トツで道明寺愛なのですけれど、それを食べながら桜を愛でたいなぁって。

そんなわけで、道中桜餅をGETしてきました。冒頭でご紹介した あけぼの さんではおいていなさそうでしたので、こちらは別店舗で購入しております。桜をみながら桜餅。なんと贅沢な幸せでしょう❀

夫が見つけたてんとう虫。ものすごく久しぶりに見たような気がします。虫は苦手なので触れませんが、てんとう虫は可愛いなぁと目だけで愛でました。

栃本親水公園

しばらく桜を愛でまして。また腹ごなしのためにお散歩です。また別の桜スポットを目指したいと思います。

まるでマンションに吸い込まれるかのような電車。単線でガタンゴトンと走る姿がなんだか銀河鉄道のようでした。

やってきたのは栃本親水公園を抜けたところ。川沿いに進んでいると桜並木が続いています。

青紫の花と、桜と、遠くに見える菜の花と。春は本当に色鮮やかですね❀

これぞまさに長閑っていう感じでたまらなくよかったです。時たま人とすれ違う程度で、風と川の水音だけが聞こえてくる世界で、荒んでいる心を洗い流してくれるかのよう…なんて妄想を。本当にそれくらい、あたたかい場所でした。

よもやま話

帰り道にたまたま見つけたマンホール。小川町は和紙で有名な町だそうで、和紙をすいている姿がマンホールになっています。これまたかわいいですね❀

yu1-simplist.hatenablog.com

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来年の桜も小川町で見ることができたらいいな、その時は武州めんさんも、あけぼのさんもお邪魔したいなと、もう来年のことですのに今から楽しみに思っています。住むわけでも、故郷という場所でもありませんけれど、こうやって大切に思うことができるっていいなぁとしみじみいたしました。楽しみだなぁ

 

 

 

 

映画・線は、僕を描く

水墨画をテーマにした映画「線は、僕を描く」を見ましたので、感想や原作についてなどをネタバレ交えて綴っていきたいと思います❀

映画のあらすじ

主人公は大学生の青山霜介。友人の古前にアルバイトを押し付けられて美術展設営現場にやってきました。そこでは、水墨画の巨匠・篠田湖山の揮毫会が行われることになっていたのでした。霜介の目に、1枚の椿の絵が止まります。そして、静かに涙を流すのでした。

その後、流れで揮毫会の手伝いもすることになりました。目の前に水墨画が描かれていく様子に釘付けになります。そこで、絵を描き終えた、篠田湖山に弟子にならないかと誘われるのでした。

想像さえしなかった

「私の弟子になってみない?」

真っ白な紙にある無限の可能性を、そこに一本の線が描かれるまでは

(作中より引用)

後日、借りていたハンカチを返すために湖山を訪ねることになった霜介。弟子になるのは自分には責任が重すぎると辞退します。それでは弟子ではなく教室の生徒であればどうかと湖山に尋ねられ、それならば…と了承するのでした。

「形はどうだっていい」

「いや、僕にはこんなこととてもできないです」

「できるかできないか じゃない。やるかやらないか だよ」

(作中より引用)

湖山には千瑛という孫がいて、彼女も水墨画の世界では有名な女性でした。そして霜介が揮毫会で目にとめた椿を描いたのが千瑛だったのです。湖山は千瑛に水墨画に関する道具について教えてあげるように言いつけ、去っていったのでした。

霜介の友人である古前と川岸は、その話に興味津々です。

「うまく言えないけど、あのなんもないところに何かがポツンってある感じがしっくりきてる」

(作中より引用)

そして千瑛に会ってみたいという古前と川岸は、水墨画の講義を開くから先生になってもらえないか聞いてくれと霜介に頼みます。後日、水墨画の練習ののち、弟子のひとりである西濱の料理を皆で囲みます。その時に霜介は千瑛に打ち明け、千瑛は湖山に促され了承するのでした。

講義は成功し、打ち上げを開くことになりました。千瑛と霜介が会話している最中、飲み物が入れ替わってしまったのです。お酒にめっぽう弱い霜介はそのまま泥酔。千瑛と友人の古前、川岸の3人は家まで送り届けるために霜介のすむマンションへと向かいます。霜介の部屋の一面には、湖山から教えられた春蘭を練習した紙が広がっていました。そして古前と川岸は次は千瑛を自宅まで送り届けます。

「先生。霜介のこと、よろしくお願いします。あいつが何かにやる気を見せたのは本当に久しぶりで…家族に不幸があってから、ずっと塞いだままだったから…。先生、よろしくお願いします。」

(作中より引用)

そこで初めて、千瑛は霜介の過去について少しだけ触れるのでした。実は霜介の両親と妹の椿は3年前にとある事故によって他界していたのです。それ以降、霜介は空っぽになってしまったように、塞ぎこんでしまっていたのでした。

そこから古前と川岸が水墨画のサークルを立ち上げ、時たま千瑛が講師としてやってくるようになりました。霜介も水墨画の練習を重ねていきます。様々な水墨画を知って、その世界に魅了されていくのでした。

映画の感想

喧嘩別れをしたまま仲直りをできないで、そのまま帰らぬ人となってしまった両親と妹。そのことから、空っぽに、真っ白になってしまった霜介くんが、水墨画に出会ったことで、どんどんと色を取り戻して、線という輪郭を取り戻していくという物語。

セリフ回しが、いわゆるエモイと言いますか。いいセリフがとても多い作品でした。いくつかご紹介したいと思います。

「そもそも、何にもならないかも」

「なれないじゃなくて、ならないかぁ」

「まぁ…」

「そっかぁ、まぁそうだよなぁ。でも何かになるんじゃなくて、何かに変わっていくもんかもねぇ」

「え?」

「人ってもんはさ」

まだ出会ったばかりの頃の霜介くんと西濱さんの会話です。自分が空っぽで「ならない」と考える霜介くん。そして自然の流れを理解している西濱さんらしいセリフでした。

「悪くない、でもこれは君の線じゃない」

「え?」

「私や千瑛のお手本にとても忠実だ」

「それはよくないことなのですか?」

「悪くは、ない」

「青山くん、形にこだわっちゃいけないよ。もっとほら力を抜いて」

どんどんと上達する霜介くんですが、それは千瑛さんや湖山先生の模写が上手になっているだけ。何を書くにしても自分なりの線を持たなくては、その人の絵とは言えません。絵を描くことが趣味だった私には染みるセリフでした。

「まぁ別に仙人とかじゃないからさ。でもこういうのが店にばーって並んでんの見慣れると忘れちゃわない?俺、忘れるんだよ」

「何をですか?」

「いや、こいつらだってついさっきまでは、あぁだったってことをさ」

牛乳や卵、野菜といった食品を、農場まで買い付けにいく西濱さん。それについていった霜介くんは、スーパーなどですませないのか尋ねます。するとクーラーボックスからはスーパーで購入したと思われるお肉が出てきました。すべてを農場からというのは現実的ではありませんよね。でも自分ができる範囲で、自然に触れようという感覚。水墨画のように自然を描くという芸術ではとても大切な感覚なのではないでしょうか。

時が流れ四季は巡って 景色が変われば心も変わる。心が変われば線も変わる。水墨画は自然と共にある絵画だと私は思う。だけど自然っていうものはそもそも自分の思いどおりにはならない。いわんや人の人生なんてね。だったら自然に寄り添って線を描き続ける。そういう生き方になったかな、私も。

自分の線は自分で見つける。そうして見つけた線がまた自分を描く。私がそうであったように。水墨画がきっと君の生きる力となってくれる

湖山先生の背景にどういった過去があるのかはわかりません。けれど何かあって、それでも水墨画や自然と寄り添うことで生きてこられたのだなぁとしみじみ伝わるセリフでした。この辺りは本当に染みましたねぇ。

個人的に西濱さんのキャラクターがとてもよかったです。江口洋介さんが演じられているのですが、このワイルドというか、大味な感じと言いますか。イメージしていた西濱さんにぴったりでした。ちょっとした表情で見せるところも素敵だし、目が生き生きしてるというか、ちょっとオーバーなくらいなのに西濱さんにはぴったりなんですよね。

この「線は、僕を描く」という映画には原作となる小説がありまして。2020年の本屋大賞にノミネートされている作品でした。当時は図書館関係で働いておりましたので、もちろんチェックして読了していた作品です。

原作との違いは結構たくさんあります。物語を霜介くんと水墨画に焦点当てているため、千瑛さんのストーリーは薄くなっています。短い映画にまとめるには、やむを得ない範囲かなと思います。そのことで霜介くんと千瑛さんの関係も、比較的穏やかですね。少しだけ小説についても触れてみたいと思います。

小説のあらすじ

両親を交通事故で失った大学生の青山霜介は孤独と喪失感のなかにありました。

親友の古前に半ば騙された形でやってきた展覧会場のアルバイト。簡単な作業と聞いていたのに、実際は自分の背丈よりも大きなパネルを運ぶ仕事ということで、霜介以外の面々は逃走してしまうのでした。そこで指揮をとっていた、西濱湖峰と会話し打ち解けるのでした。

アルバイトがひと段落氏、お弁当を食べに控室に向かうと、小柄な老人がいました。老人に勧められるまま、お弁当を共に食べていると箸の使い方を褒められます。そのまま、展覧会場に一緒に入ることになりました。そこで老人は飾られた水墨画の感想を尋ねます。そして霜介は水墨画の白と黒の世界に、色を感じ取ったのです。黒で書かれた花が赤く見えるというのです。

そこで老人を探していた千瑛がやってきます。なんと老人は水墨画の巨匠・篠田湖山にだったのです。そして、霜介はその場で内弟子にされてしまうのでした。それに反発したのは、湖山に孫娘にあたる千瑛でした。彼女は、霜介に翌年の「湖山賞」をかけて勝負すると宣言するのです。

筆先から生み出される「線」から生み出される水墨画で命を描きます。初心者の霜介はとまどいながらもどんどんと水墨画の世界に魅了されていくのでした。

よもやま話

小説版を読んだのは2021年2月だったようです。過去の読書記録ノートに記録されていました。当時の感想としてはこのようなことを描いていたようです。

東山魁夷の影響で日本画を観ることはあったけれど、水墨画を意識したことはなかった。春蘭の感触や香りがとてもきになった。文も世界観も美しかった。

小説という文面の世界では描かれている春蘭や菊などの実際の様子はわかりません。それでも何かを想像することができた、奥行きのある作品だったと記憶しています。

特に印象に残ったのが白と黒の世界に色を感じるということ。黒で描かれた薔薇が、真っ赤に見えるってどういう感覚なんだろう…と思いました。この体験、実は私もその後に体験しまして。とある水墨画で描かれた花に黄色い色を見たのです。不思議ですよね。

ここはこの物語の重要な点だと思っていたので、映画版では一切触れていなくてびっくりです。映像という答えを出して、そこから心で受け取るものですから、受け手によってはそう感じない人もいるでしょう。だからといって、わざとらしく一瞬黒い墨を赤くするというのも違う気がします。そう考えると、この表現は小説や、白黒で描かれる漫画だからこそできる表現なのかもしれませんね。

また映画では千瑛に水墨画を教えているのは斎藤湖栖という男性です。彼は最年少で古湖山賞を受賞した人で、まるで機械のように緻密で完璧な水墨画を描きます。完璧な技術をもって絵を描くのです。打って変わって二番弟子の西濱湖峰はというと、完璧な技術を持ち合わせているわけではありません。ですが、人を魅了させる絵を描くのでした。

この対比がまた面白かったのですが、映画版では湖栖は出てきませんでしたので、そのあたりのお話や千瑛と湖栖との物語も全てカットだったよう。私個人のイメージとしては湖栖さんは眼鏡をかけて向井理さんだったので、ちょっとみたかったんですけれどね。また映画に出演している藤堂翠山という人も原作では男性で映画では女性、人物像も随分と違っていました。そのあたりはちょっと残念ではありましたね。

それでも、水墨画に触れる映画作品としてはとても面白かったですし、興味がある方はぜひ映画も小説も見ていただきたいなぁと思います。ちなみに小説は続編がでているようで。こちらはまだ読めていませんから、また近々読みたいと思います。でも、いろいろと小説では忘れているところも多いですから「線は、僕を描く」を再読してからかな…と思ったり。読みたいもの、見たいものがたまっていきますねぇ。