幼いころから…というわけではありませんが、水族館が好きです。むしろ大人になってからの方が面白いと思えるようになってきたように思います。ただぼーっと眺めるのも楽しいし、学術的な解説を読むのも楽しいし、どのお魚が一番おいしいのだろうか…なんて考えながら見るのも楽しい。
このブログを開始してからでも、茨城にあるアクアワールドや、静岡にある沼津港深海水族館にお邪魔しています。
私にとって海はまるで異世界のような感覚と言えばいいでしょうか。私たちが生活する陸の上とは、生態系も成り立ちも違う…そんな海がとても神秘的に感じます。言ってしまえば、海のなかの生きものは異世界生物というか宇宙人というか、とても不思議なものという感覚があります。
そんなお魚たちをこよなく愛する人物…と言われて想像すると、結構上位に”さかなクン”さんが思い浮かぶのではないでしょうか?彼の自叙伝をもとに、フィクションを織り交ぜながらユーモアたっぷりに描かれた映画「さかなのこ」を拝見しました。
ネタバレを交えながら綴っていきたいと思います。
さかなのこ あらすじ
小学生のミー坊(さかなクン)は水族館でみた”タコ”に魅了されます。そしてお母さんが買ってくれた魚図鑑を食い入るように読み込んで、寝ても覚めても魚のことばかり考えているようなそんな子でした。
父親はミー坊が周囲の子ども達とは少し違うところがあることを心配します。しかし母親はミー坊がしたいこと、興味のあることを止めることは決してありません。いつも温かく見守り続けていました。そんな教育方針の違いからか、子ども達が寝静まったあと2人が口論することがありました。
ある日、ミー坊が友人のヒヨと下校途中、頭に魚の帽子をかぶった不思議な男性と出会います。彼は”ぎょぎょおじさん”と呼ばれ、つかまると改造されてしまうと子どもたちの間で噂になっている人物でした。
そんなぎょぎょおじさんとミー坊はお互い魚好き…ということもあり、意気投合します。しかし、魚の話や絵を描くことに夢中になりすぎた2人は帰宅することさえ忘れてしまいます。随分と夜も深まった午後9時頃、ぎょぎょおじさんの家には警察官がやってきます。
なんと誘拐犯と勘違いされ、任意同行されてしまうのでした。ミー坊は絵を描いていただけで、ぎょぎょおじさんに罪はないことを証言します。それでも署までぎょぎょおじさんは連れていかれることになったのです。ぎょぎょおじさんは、自分がかぶっていた魚の帽子をミー坊に与えて、彼らの前から去っていくのでした。
それから時間は流れて、ミー坊は高校生に。ミー坊の魚好きはさらに深まる一方、勉強の方はてんでダメでした。
そんな高校生活の中で、ひょんなことから学校の不良グループの子たちと仲良くなりました。そしてかつての友人であるヒヨと再会します。ヒヨは他校に進学していましたが、そこで狂犬と呼ばれ不良になっていたのです。しかし根は真面目なようで、不良を辞め勉強して東京の大学に進学すると言います。
学校での三者面談でも成績について問題になりますが、母親は今も変わらず、ミー坊はそのままで良いと背中を押し続けていました。
そして卒業後、ミー坊は東京にでて一人暮らしをはじめます。水族館や寿司屋、ペットショップなどひたむきに魚を追いかけ続け、失敗の日々を重ねます。様々な人との出会いや再会を通じて、ミー坊は自分だけの道を模索し突き進んでいくのでした。
感想
まず感想の第一印象としては「良い!」でした。コミカルであったりシュールで笑えるシーンもあり、面白い作品です。でも考えされられるシーンもたくさんあって、ほっこりもして…。それら全体ひっくるめて「良い!」でした。
さかなクンさんの自叙伝「一魚一会」をベースに、フィクションの物語を織り交ぜつつ綴られた作品だそうで。劇中のぎょぎょおじさんは、フィクションの人物のようで少し安心しました。
男か女かは、どっちでもいい
こんな言葉から始まる「さかなのこ」。さかなクンさんは男性の方ですが、彼を演じているのは、能年玲奈さんこと のんさん。中世的な顔立ちでスラリとしたスタイル、とはいえのんさんは女性です。
作品を実際に拝見するまでは正直、少々違和感がありました。これはどういうスタンスでみればいいのかしら?のんさんだけど、男としてみればいいの?それともトランスジェンダーであるとみればいいの?ここにまでポリコレ配慮?とか。
でも見ていくうちに、本当にそんなことはどうでもいいんだなぁと思わされます。
のんさんは女性ですが、ミー坊は男性として描かれています。ただ女性が演じているというそれだけのこと。もう本当に、どっちでもいいんです。
作品を見ていけば見ていくほど、のんさんがさかなクンさん に見えてきて、全然違和感がないんです。というか、もう のんさん じゃないとこの役はできないな…と思わされるくらい。そりゃ性別なんて、どっちでもいいわねっと思わせてくれました。
さかなクンさんは ひたむきに明るく、誠実で…というイメージがあります。その背景にはきっと我々が想像できない苦労があったと思います。
何かに無我夢中になれる。それはとても素晴らしいスキルですが、他が見えなくなってしまうことの裏返しでもあります。それをずっと支えてこられたお母さまがすごいなぁとしみじみ。
お母さまの役は井川遥さんがされているのですけれど、これが本当に美しくてですね。ところどころ「ん?それはどうなの?」と思うシーンもあります。けれど、とにかく好きなことを子どもにさせてあげるというスタンス…。すごいなぁと思いました。
井川さん以外の方もどのキャラクターもとても素敵だったんです。不良グループの面々も、親友のヒヨも、ペットショップ屋の店長も…。
のんさんが舞台挨拶で 多幸感 という言葉を使っていらっしゃるのを拝見しましたけれど、まさにその通りでした。愛情あふれる、幸せになれる作品です。
よもやま話
「さかなのこ」の監督をされたのは沖田修一さんという方です。代表作といえば「南極料理人」なのではないでしょうか。実は私「南極料理人」が大好きなんです!特におにぎりと豚汁を食べるシーン、ラーメンのシーンは定期的に見たくなるんですよね。
どちらの作品も、良い感じの力の抜け具合が本当に好きです。
爆笑する!とか号泣した!とかそういう大きな揺れ動きがあるわけではないんです。けど笑ってしまうシーンもあるし、ほっこりするシーンもあるし。あぁすきだなぁって思える作品をつくられる監督さんだなぁと思います。
随分と前に「キツツキと雨」を、少し前に「おらおらでひとりいぐも」を拝見しました。これで4作目。沖田監督の他の作品もちょいちょい見ていきたいなと思います。