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シンプリストになりたいのです

映画・インフェルノ の感想

映画『ダ・ヴィンチ・コード』と『天使と悪魔』の2作を十数年ぶりに見返してみて、宗教にまつわることや美術に関係することは知らないことばかりだなぁと痛感している今日この頃。この2作は大学生の頃に一度見ていたのですが、3作目の『インフェルノ』はみていなかったので、今回初めて見てみました。

感想をネタバレ交えて綴っていきたいと思います。

あらすじ

ハーバード大学で宗教象徴学を研究するラングドン教授が目を覚ました場所は、イタリアのフィレンツェにある病院の一室でした。ラングドン教授は、何故自分がここにいるのかがどうしても思い出せないどころか、ここ数日間の記憶すらありませんでした。更にまるで地獄に堕ちてしまったような阿鼻叫喚な光景が幻覚として見えるのです。

ラングドン教授の担当医である女医のシエナによると、銃撃により頭部を怪我しており、それが原因でここ数日の記憶がなくなってしまっており、その記憶はまた数日で戻るだろうということでした。ラングドン教授は財布も時計すらも失った状態で発見されましたが、シエナが9歳の頃に彼の講演会を見ていたことで怪我人がラングドン教授だとわかったのだと言います。

そこに突然、銃を持った女性 ヴァエンサが現れ、ラングドン教授に襲い掛かろうとします。警察の制服を着ていますが、まるで殺し屋のようです。シエナは咄嗟にラングドン教授を連れて自分のアパートまで逃げ出すのでした。

翌朝、再び目を覚ましたラングドン教授は、コーヒーという名前すら思い出すことができません。シャワーを浴びて、シエナの同居人の衣服を借りることになりました。自身の衣服から荷物を取り出していると、ポケットの中から危険物の運搬に使用されるバイオチューブが出てきました。当然、ラングドン教授には全く記憶にありません。そのバイオチューブは政府支給品でかなりの高性能であり、特定の人物以外開封できないように指紋認証までついていました。

シエナはこのことを領事館に伝えようとしますが、警官たちに追われている可能性のあるラングドン教授はそれを引き留めます。そして、開封できるかを確認しようと提案するのでした。

しかし、そのバイオチューブの持ち主はラングドン教授で間違いなかったようでした。

ただバイオチューブの中に入っていたのは、ウイルスや危険物ではなく、映像を映し出す小型のプロジェクターのようなものでした。そのプロジェクターは人骨でできており、人間を喰らう三面の悪魔の絵が彫られていました。中世で黒死病を表すときによく使われた絵柄だと言います。ラングドン教授はコーヒーの名前や自分のミドルネームを思い出すことはできませんでしたが、こういった知識に関しては問題なく思い出せるようです。

そのプロジェクターを付けてみると、ダンテの『インフェルノ』(『神曲』地獄篇)をモチーフとしたボッティチェリの『地獄の見取り図』に一部修正を加えた絵が映し出されました。まさにその光景は、ラングドン教授が幻影でみたものそのものでした。

その絵の謎を紐解いていくと、バートランド・ゾブリストという遺伝学者に辿り着きました。彼の主張は過激なものでした。このままでは人口爆発に歯止めをかけることができず、人類は滅んでしまう。過激な方策を以て対処しなければならない…というものでした。ただ彼は数日前に自ら命を絶ったようでした。

ラングドン教授とシエナは、ゾブリストが人類を殺戮することが可能である「インフェルノ」というウィルスを開発したのではないかと考え、彼の残した『地獄の見取り図』から、真相を解明しようと動き出すけれど…。

感想

ダ・ヴィンチ・コード』や『天使と悪魔』は宗教と芸術をテーマにしているように感じましたが、今回はあまり宗教はテーマになっていないようです。

「スイッチがある。それを押すと人類の半分が死ぬ。押さないと人類は100年以内に絶望する。君ならどうする?人類は、自らの体内に発生したガンなのだ。君は人類を救いたいか?僕が連中に追われたら君に道を残そう。困難な道だ、その終点は”地獄(インフェルノ)”。君は、緊急の場合の代役で、人類を救う最後の望みだ。君に託す、”地獄”を世界に解き放て。尋ねて 見出せ」

映画の冒頭、ゾブリストが死の間際に誰にでもなく語り掛ける言葉から映画が始まります。人口爆発による食料不足で争い人類が滅亡するのか、それとも先手を打って人口を半分に減らして人類が存続するように仕向けるか、どちらが正しいのか…という物語です。

テーマとしては面白かったのですが、ところどころひっかかるところがありました。まぁそれを言ってはおしまいよ~っていう突っ込みかもしれませんけれど。

ゾブリストはインフェルノというウイルスを作り出し、人口を半分まで減らそうと考えるところまでは理解できますけど、どうしてすぐにまき散らさなかったのでしょう?いろいろと理由らしいことは作中にも出てくるんですけれど、でも貴方は地球を救うためにウイルスが必要だと思ったんですよね…?と。あと敵組織的な人たちの行動も、いや なんでやねん、あかんやろ、というものがいくつかありました。そういったところから、この事件を起こしたいから『地獄の見取り図』を使用した、というより『地獄の見取り図』を用いた謎解きがしたくて、こうした…という感じに見えてしまって、そこが残念でした。

それでもスピード感はありますし、最後まで興味深く見ることはできました。どんでん返しってこういう映画をいうのかしらん?テーマとしても興味深かったです。

地獄

「現代の地獄の概念を築いたのはダンテだ。700年前の彼の地獄のイメージは生き続け、彼の創造した地獄をボッティチェリが絵にした」

日本における地獄は、もともとは古代インドの民間信仰である死後の世界の思想が、中国に伝播し、道教などと混ざり合い、日本に仏教と共に伝わったとされています。仏教伝来は538年(552年という説も)ですから、約1500年くらいの歴史になるのでしょうか。

キリスト教的な地獄と、道教などとまじりあった日本や中国の地獄は全く異なるはずですが、どこか似ているように感じるから不思議です。そういえば、昔吸血鬼伝説を調べた時も、全く違うところで同じような伝説が同じ時期に広がっているのを見て、不思議に思った記憶があります。

地獄に別段詳しいというわけではないのですが『鬼灯の冷徹』という漫画・アニメが好きで一時期よく見ていました。

地獄の日常を描いた作品で、主人公は鬼なんです。いろんな地獄について知ることができて、アニメも面白かったなぁ。海外における地獄の考え方の本はあまり読んだことがないのですが、『鬼灯の冷徹』でも多少触れられていて、それがとても興味深いのでいつか触れてみたいものです。

よもやま話

ボッティチェリって誰だろうと思って調べてみたら、『プリマヴェーラ』や『ヴィーナスの誕生』を描いた人だったのですね。他の絵画も見てみたら、みたことのある絵ばかりで、「お前だったのか…」と1人驚愕。むしろどうして今まで名前を憶えていなかったんだろう…。確かに10分後には忘れてしまいそうな名前ですけれど。

ちなみに、原作者のダンブラウンは今回映画として見た3作以外にも、ラングドン教授の登場する小説があるそうです。『ロスト・シンボル』が本来の3作目のようですが、こちらは映像化される予定はないようで。フリーメイソンをテーマとしているようですが、どんなお話なのかこれまた興味深いですねぇ。『オリジン』もまた、興味深くてスペインやサグラダ・ファミリアが出てくるそうな。読む予定はないですけれど…もしかしたら、映画化されないのであれば見るかも?ですね。

はてさて、次は何をみましょうか。