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シンプリストになりたいのです

映画・「パプリカ」の感想

もし、眠っている間に見る夢を自由自在にできるとしたら何がしたいですか?

私だと夢の中でも推しに会いたいなんて、欲望丸出しなことが浮かびますけれど。そんな夢にまつわる映画「パプリカ」をみました。

感想をネタバレ交えて綴っていきたいと思います。

パプリカのあらすじ

主人公である千葉敦子は常に冷静沈着な美しい女性。彼女は精神医療研究所に勤めており、セラピー機器の研究者をしています。

しかしそんな彼女には”パプリカ”という裏の顔がありました。パプリカは千葉敦子とは違い、明るい髪色に天真爛漫なまるで少女のような女性です。DCミニという、他人の夢を共有、また夢の中に入ることができるという装置をつかい、患者の夢の中に潜り込み、悪夢の原因を探る治療をしていたのです。

「パプリカ。開発されたサイコセラピーマシンで勝手な治療を行う女がいると聞いた」

(作中より引用)

そんなある日、DCミニが何者かに盗まれてしまいます。まだアクセス制御をしていない状態のDCミニを盗まれたとあっては一大事です。

「盗んだ人間はDCミニを通じて、いつどこからでも他のサイコセラピーマシンに、それを使っている私たちの意識に侵入することができる」

(作中より引用)

夢という無意識の世界に自由自在に侵入できるということは、人間を思うままに操り、洗脳することができるということ。

「科学技術を制御するのは人間だ。」

「理事長」

「他者の夢を共有する。まさに夢の科学だ。だがじかに夢に触れることは暴力にさえつながる。あれは作るできではなかった」

「また、そのお話でしたか。DCミニは精神治療の新地平を照らす太陽の王子様です」

「夢を支配する。思い上がりは隙を生むものだ」

「支配ではありません。我々はクライアントとのより深い共感を目指しているのです」

(作中より引用)

敦子やDCミニを開発した時田、開発担当責任の島たちはDCミニを探し、盗んだ犯人を追うことになるのでした。

感想

夢同士の境界が、夢と現実の境界がどんどんと曖昧になっていく世界観にぐっと引き込まれるものがありました。

序盤はわかりやすく蝶がとび、あぁこれは胡蝶の夢を表しているだろうから、ここは夢のシーンだと表しているんだな…とわかるのですけれど、これがどんどんと困難になっていきます。

胡蝶の夢 - Wikipedia

胡蝶の夢だけでなく、スフィンクスオイディプス、度重なるワードサラダにどこまで意味があって、もしかしたらこれらは無意味なのかと、どんどんと難解になっていく。けれど、話の根幹にあたる部分はぶれないで、ちゃんと追いかけていくことができる不思議。

きっとすべてに意味があるのかもしれない。でも、それがわからない恐怖と、だからこそ引き込まれていく感覚。まるで狂気性をまざまざと見せつけられている感覚がたまらなくよかったです。

調べてみると、ワードサラダについて研究されている方もおられました。大阪公立大学の学術リポジトリより。とても面白い考察で、なるほどそういう意味なのか…!とふむふむと思いながら読みました。

 

大阪公立大学 学術機関リポジトリ

 

「映画『パプリカ』におかえるワードサラダという表現:作中における2つのワードサラダの考察」

作中、いくつかのシーンで同性愛やトランスジェンダーを表しているような暗喩がありました。2006年公開作品のようですが、当時は今ほどオープンではなく理解も進んでいなかった時代です。そんな時代だからこそ、自身に内在している問題が夢の世界で顕著に表れている。これらについても、今と当時では違った受け取り方だったのではないかと思います。このあたりも、考察してみるととても興味深かったです。

また、ネット上でのバー「RADIO CLUB」というお店が出てくるのですけれど、ここはネット世界と現実世界を結ぶ場所。要は仮想空間(画面の向こう)と作中を結ぶ場所。バーテンの声を監督である今敏さんと作者である筒井康隆さんがされているところから、世界を結ぶ仲介役という役割を果たしているのかと推測。そうだとしたら遊び心のようなものと、訴えたい何かがあるのだと感じます。

雰囲気はセクシャリティなんですけれど、卑猥ではなくて、でもやっぱりセクシャリティという微妙な塩梅が個人的にはとても好きでした。

見るたびに発見があるから、これは何回も何回もみて、楽しむ映画なのかなと思います。どんどんとそういう映画がたまっているような気がする…。

よもやま話

上映時間は90分と、割と短めの作品なのに、見終えたあとの満足感がすごかったんです。よくこのストーリーを90分にまとめたなぁと。だからといって、展開が雑だとも感じませんでした。テンポよく進んでいくという感じは、むしろ昨今の映画になれた私には心地よくもありました。

調べてみたところ、原作の内容を一部変更しているとはいえ、根っことなるところは忠実だという評価でした(個人的に重要なところ)。原作をそのまま1本の映画にするには、あまりに長尺になってしまう…ということでこれは致し方無いことですね。

そんなわけで、原作の単行本を手に入れまして。ページを見てみたところ、394ページとのこと。ほうほう。近日中に読めたら…いいなと思っています。忘れないうちにね。

今日はこの辺りで❀