SIMPLE

シンプリストになりたいのです

映画・ペンギンハイウェイ

あまり順位というものをつけるのは好きではありませんけれど、もし作家で誰が一番好きか?という答えを出すのであれば、迷いなく森見登美彦さんをあげると思います。すべての著書を拝読したわけではないのですけれど、読書が楽しいと思うようになったきっかけは森見さんで、たぶん私にとっての特別は生涯変わらなそうです。

森見さんの作品はメディアミックスする際、アニメとの親和性が非常に高いように思います。ファンタジーでへんてこりんな世界なのに、読んでいて光景がまざまざと浮かぶから、アニメ化されても違和感があまりないのですよね。

そんなわけで森見さんの小説をアニメ映画化した作品「ペンギン・ハイウェイ」を見ましたので、感想をネタバレ交えて綴っていこうと思います。

あらすじ

主人公のアオヤマくんは小学4年生。勉強熱心で努力を怠らず、気になることはとことん研究できる、そんな男の子。通っている歯科医院に勤めているお姉さん(特に胸)が気になるお年頃です。

そんなアオヤマくんが住む街では突如、アデリーペンギンの群れが出現するという怪事件が発生します。海がない街ですからどこからやってきたのかもわかりません。それに車にひかれてもへっちゃらで、何も食事をとりません。そしてアデリーペンギンは街から離れてしまうとゴミの姿に変身してしまうのでした。ペンギンの正体を掴むため、アオヤマくんは「ペンギンハイウェイ研究」という名前を付けた研究を始めます。

アオヤマくんは「ペンギンハイウェイ研究」以外にもさまざまな研究をしています。「お姉さん」の生態を研究していたり、「プロジェクト・アマゾン」ではその街の水源がどこにあるのかを調べてみたり、「妹わがまま記録」では妹から投げつけられた無理難題を記録しています。

クラスメイトで冒険仲間のウチダくんと一緒にとある冒険をしていたときのこと。スズキくんというずいぶんとわんぱくなクラスメイトが舎弟の2人を連れてやってきました。すぐさま逃げ出すアオヤマくんとウチダくんですが、残念なことにアオヤマくんは彼らにつかまって自動販売機に拘束され、そのまま放置されてしまうのでした。

しばらくして、そこにお姉さんが現れます。なんとか助け出されたアオヤマくん。そして、お姉さんが缶ジュースをアデリーペンギンへと変身させるところ見てしまったのです。「ペンギンハイウェイ研究」と「お姉さん」の研究がつながります。

アオヤマくんのクラスにはハヤモトさんという女の子がいます。お父さんは大学の先生をしていて、彼女も小学4年生にして相対性理論の本を読むほど研究熱心な女の子です。チェスが得意で、クラスでは誰も勝つことができませんでした。しかし、アオヤマくんが勝負に勝ったことでハヤモトさんはアオヤマくんに秘密を共有します。

アオヤマくんが通う学校の近くには森があり、そこには「銀の月」という噂がありました。なんでもその月を見てしまうと、病気になってしまうという怖い噂です。なんとその噂の元凶はハヤモトさんだったのです。

ハヤモトさんはアオヤマくんとウチダくんを連れて、森の奥へと進んでいきます。広い広い草原の中心には、謎の球体が浮かんでいたのです。ハヤモトさんはその球体が他の人に見つからないように、噂をながしていたのです。そして謎の球体に”海”と名前をつけ、研究をしていました。そしてアオヤマくんに共同研究をしないかと提案するのでした。

ちょうど夏休みにはいったことで、アオヤマくん、ウチダくん、ハヤモトさんは研究を進めていきます。やがて、アオヤマくんはお姉さんと”海”とペンギンに奇妙な関連性があることに気が付くのでした。いったいそれらは何なのか…?謎は解明されるのか…?

感想

まず、とても面白かった!作画もとても美しく、凝られているなぁと思うようなシーンも。なにより物語も構成がとてもよくて、ワクワクドキドキさせてくれるような作品だと思います。

個人的に違和感があったのは吹替キャストくらいでしょうか。主演のアオヤマくんや、子ども達はとてもよかっただけに、ところどころ「んー…違和感」と思うキャラクターもおられまして。そこが残念です。下手というわけではないんですよ。でも、キャラと声があってないというか、なんというか。ま、こればかりは好みの問題ですよね。

原作小説はまだ途中までしか読んでいないのですけれど、これは原作も読んでみて、原作と映画の違いを楽しんだり、”行間を読む”作業をしたいなぁと思いました。

この作品は子ども向けということですけれど、個人的には子どもよりも大人が楽しめる作品なんじゃないかなと思います。映画って何層にも層があって、パッと見てわかる表面の部分があって、さらにその奥に「これはあれを表していて」という考察して楽しめる部分があって、それが何層にも重なっているんだと思います。

となりのトトロ」はトトロがでてきてワクワクとか、猫バスがでてきてドキドキみたいな表面の子どもが楽しめる部分と、その奥に きっとこの家は…とか、さつきちゃんがこうしているということは…とか考察できる層があって、大人は懐かしさであったり、そういった考察部分であったりを楽しめるんだと思うんです。

アオヤマくんはお姉さんのことが気になっていて、特にお胸が気になって仕方ありません。1日のうち30分くらいはそのことを考えてしまい、研究してしまうくらいには。表面だけ見れば、そういった表現に対して、いやらしいとか気持ち悪いとか女性蔑視だ!とか思ってしまうところかもしれません。けれど、もしそれが早熟している子どもであるということを表しているとしたら?彼なりのませた見栄の1つでもあるとしたら?

実際にはどうかはわかりませんけれど、森見さんの小説も何層にも重なっているような表面だけではない作品を書かれる方です。そういったところを小説から、さらに読み取れたらなと思います。

昔からいるよ。ここは地球だもの。本当に遠くまで行くと、元居た場所に帰るものなのよ。

(作中より引用)

わかったようで、わからない。面白いけど怖かったり変だと思うところがあったり。それを考える余白のある映画なのかなと個人的には思っています。

ちなみにペンギンハイウェイとはペンギンが海から陸に上がるときに決まってたどるルートのことをいうのだそう。またひとつ勉強になりました。

今回はこの辺で❀次は何をみましょうかね。