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シンプリストになりたいのです

映画・かもめ食堂

以前からタイトルをよく目にしていて、いつかは見よう見ようと思いつつ結局は見ていなかった「かもめ食堂」。今回、満を持して鑑賞いたしましたので、ネタバレ交えて綴っていきたいと思います。

あらすじ

フィンランドヘルシンキで「かもめ食堂」という小さな食堂をオープンした日本人女性のサチエ。けれどお客さんは全然で、通ってくれる客は日本文化に興味のある青年・トンミだけでした。トンミは日本アニメにも興味があるようで、サチエにアニメ『ガッチャマン』のオープニング曲について尋ねます。歌詞の序盤こそ思い出せるけれど、どうしてもその先が思い出せずに悶々とするサチエ。

立ち寄った本屋でも曲のことが頭から離れません。カフェスペースに移動してみると、斜め前に日本人観光客の女性ミドリを見つけ『ガッチャマン』のオープニング曲について尋ねると、なんと全部覚えていたのです。二人は打ち解け、一緒に暮らすようになり、またミドリはサチエが営む「かもめ食堂」を手伝うことになりました。

集客するためにはどうするかと試行錯誤を繰り返し、時にはトナカイやザリガニでおにぎりを作ってみたり、シナモンロールを焼いてみたり。そんなある日、ロストバゲージにあって困っていた女性マサコが来店し、仲間に加わるのでした。

淡々と、でもどこかほのぼのと営業が続く毎日のなかで、訳ありな人たちと紡ぐ日常の物語です。

感想

大きな起承転結があるというわけではなく、ただ淡々とほのぼのと続くストーリー。その中で、ちょっと心を打たれたり、笑ったり、温かい気持ちでみることができる作品でした。

かもめ食堂のメインメニューはね、おにぎりなんです

(作中より引用)

作中、いくつも出てくるおにぎり。鮭・梅干し・おかかの3種類。日本のソウルフードですよね。おにぎりといえば、私は『南極料理人』という映画が思い浮かびます。

南極観測隊に料理人として参加した男性(堺雅人さん)のお話。氷と雪に閉ざされ、寒すぎてウィルスすら生きていけない極限世界。そんな中で毎日のご飯を担当する料理人はとても大切なお仕事です。この作品に出てくる料理がね、もうどれもこれもがおいしそうなんですよ。特に推したいのが先ほどあげたおにぎり、そして一緒に食べる豚汁。そして後半出てくるラーメン。どれもありふれた、ごくごく日常のごはんですよね。でもそれがおいしそうで、おいしそうで。『かもめ食堂』でも『南極料理人』でもおにぎりを頬張るシーンはとても印象的でした。やっぱり日本人のソウルフードだからでしょうかね。私も食べたくなりました。

蛇足なのですが、海苔って日本人以外は消化が難しいと聞いたことがあります。ヘルシンキで食べた現地の皆様は大丈夫かしらん?と思って調べてみたら、焼き海苔は大丈夫なのですね。生海苔はほぼ日本人にしか消化できないんだそうな。

(以下URL参照)

toblef.com

「ねぇミドリさん、もし明日世界が終わっちゃうとしたら最後に何したいですか?」

『明日おわっちゃうんですか?』

「いや、例えば」

『えぇー…そうですね、何か…何かすごーくおいしいものが食べたいです』

「やっぱり?」

『え?』

「いや、私もね、この世の終わりってときには、もう絶対おいしいものが食べたいんですよ。とっておきの材料買ってきて。いっぱいごちそう作って。好きな人だけ呼んで。おいしいお酒飲みながらのんびりおいしい料理を食べて…」

(作中より引用)

サチエさんとミドリさんの会話から。よく、明日世界が終わったら…という、もしも話を耳にしますよね。そういうときに必ずセットで「食」が出てくるように思います。最後の最後に食べたいものって何だろうって、私もたまに考えるんですけれど、たぶん自宅でお吸い物と親子丼とかそういうありふれたものを食べそうだなぁ。でも一番大切なものは、何を食べるかというより誰と食べるかな気がしていて。きっと私は夫と食事をとることを希望すると思うので、夫が好きな唐揚げとかを揚げて食べるかもしれないなぁなんて思ったり。

凪良ゆうさんの『滅びの前のシャングリラ』や小川糸さんの『ライオンのおやつ』を読んだときにも同じことを考えましたが、環境が当時とは変わっていますので当然食べたいものも変わっていきます。こうした変化も楽しんでいきたいと思っています。

『いいわね、やりたいことをやっていらして』

「やりたくないことは、やらないだけなんです」

(作中より引用)

最後にこちらはマサコさんとサチエさんの会話。私もやりたいことをやるより、やりたくないことをやらないことの方がずっとずっと重要だと思って生きています。会いたくない人にはできるだけ会わないし、したくないことはできるだけしない。もちろんすべてをわがままにできるわけではありませんけれど、自分の指針のような感じです。そういったことを我慢するのもいいですけれど、投げ出して生きる人間が少しくらいいても、きっと世界は変わらずまわっていきます。大丈夫大丈夫。

BGMも最小限のこの作品。見終えて、あぁよかったなぁと浸って終わりかと思いきや。次の日、料理をしていて(パン生地をこねていました)、ふとかもめ食堂をBGMに流したいなぁ…と思いました。おすすめされている方が「かもめ食堂は何度でも見たくなるのよ、世界に浸りたくって」とおっしゃっている意味がなんとなく分かった気がします。

作中で、それぞれのキャラクターの背景を描きすぎないというところも個人的に好きです。最近は減ってしまっている、行間を読む作品。与えられた映像や、少ないセリフからきっとこういう背景なんだろうな…と推測はするけど、答えがあるわけではなくて。それくらいがちょうどいいなぁって思うんです。考える余白のある作品、また定期的に浸ろうと思います。原作も読んでみたいなぁ

 

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