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シンプリストになりたいのです

映画・メタモルフォーゼの縁側

幼少の頃からアニメをよく見る環境で育ちました。病気がちだった幼少期は、家でVHSが擦り切れるほどセーラームーンアンパンマンのアニメを観ていたそうです。

小学生くらいになってくるとアニメと距離ができてくるのですけれど、小学生の高学年くらいになると今度は漫画を読むようになり、それがきっかけでアニメに戻ってくるようになりました。犬夜叉幽遊白書最遊記るろうに剣心…。この頃みた作品は今でも大好きな作品です。

私は一つの作品に対して一時的に深く深くはまり込みます。その作品のお気に入りキャラクターのことは調べ尽くすようなタイプでした。そんなこんなでいろいろと調べていく中で、二次創作という存在を知ったのです。二次創作とはすでにある作品の設定やキャラクターを用いて、新たな作品を作ること。同人誌やイラスト、小説、コスプレも二次創作なのではないでしょうか。最近はイラストではなく、ファンアートといった方がよいのかもしれませんね。

当然、私も同じようにファンアートを描いていました。描き始めたのは中学1年生くらいです。当時描いたものは処分してしまいましたが、ほぼ毎日のように絵を描いていました。成人してからPCで絵を描くようになりますが、当然ペンタブなんてもっていませんでしたので、マウスをゴリゴリしながら描いたことを覚えています。

はじめてマウスで描いたものが↑こちら。絵を描く用のソフトもありませんでしたので、PCに入っているペイントの機能で描き始めました。そこから調べていく中で、ペンタブのことやお絵かきソフトのことを知ってふかまっていったというような感じですね。

↑これがはじめてソフトを使って描いたもの。たぶん2013年くらいです。

そこからいろんな作品の絵を描くようになりました。↑で2013年くらいなので10年くらい前でしょうか。

↑は『鬼灯の冷徹』にハマっていたころに描いた鬼灯様。横顔とか、胸像を描くことが好きなのと、色塗りがあまり好きではないので、こういったざぁああーーと描いただけのラフ画に近いのが多いです。ファンアートで面白いところは自分の好きなシチュエーションのキャラクターを描けるところ。鬼灯様は煙管は吸ってらっしゃるけど、煙草を吸っているシーンがなかったので…。

今年になってから描いたのは新アニメが嬉しすぎて描いた『うる星やつら』のキャラクター。ラムちゃんやランちゃんを描いたのですが、普段は描かない系統だったので とても難しく…。というか、ここ数年、ろくに描いてなかったので全然思ったように描けず、悔しいっ…!という感じです。この辺りはリベンジしたいものです。

はてさて、今までの二次創作について綴ってまいりました。この他にもフィギュアやドールを作ったり、ぬいぐるみを作ったり…様々な表現の仕方があります。そして中には、漫画を描いていらっしゃる方もおられます。同人誌といわれるものですね。ここからは同人誌について、映画の感想をネタバレ交えて綴っていこうと思います。

映画『メタモルフォーゼの縁側』

毎晩こっそりBL漫画を楽しんでいる17歳の女子高生・うららと、夫に先立たれ孤独に暮らす75歳の老婦人・雪。ある日、うららがアルバイトする本屋に雪がやってくる。美しい表紙にひかれてBL漫画を手に取った雪は、初めてのぞく世界に驚きつつも、男の子たちが繰り広げる恋物語に魅了される。BL漫画の話題で意気投合したうららと雪は、雪の家の縁側で一緒に漫画を読んでは語り合うようになり、立場も年齢も越えて友情を育んでいく。

(映画ドットコムより引用)

eiga.com

BL漫画とはボーイズラブ漫画のことです。男性同士の恋愛を描いた物語ですね。人間関係だけを描いた作品もあれば、性描写のある作品もあります。その度合いも様々です。ここ数年でBL漫画の書店での専有面積が増えているような気がするのは気のせいでしょうか…。そういった作品をこよなく愛する方々のことを”腐女子”といっていたりもしましたが、今はどうなんでしょうかね。一部では堂々とBL漫画が好き!と言っていた方もおられましたが、やはり少数派でした。ある種、abnormalな趣味とまでは言いませんが、世間からみたらそういうふうに見られているようなところもあるのではないでしょうか。

作中、うららちゃんと雪さんが、こじゃれた喫茶店でお話をしているシーンがあります。BL漫画について話す雪さん。初めて誰かと共有することが嬉しくてつい話し込みます。対して、周りの目が気になるうららちゃん。その姿に何処か察したような雪さんの表情が印象的でした。

いくら自分がBL漫画が好きでも、それを好きだと他人に知られたくない。話し合えるのは嬉しいけれど、それは狭いコミュニティの中でだけの秘密。特に高校生という過敏な年代のうららちゃんであれば、思うところもたくさんあるのだと思います。この辺りの描き方が、とても優しかったです。

全体的な感想としては悪い人がでてこない、令和らしい作品だと思います。

もちろん、BL漫画に偏見がないわけではありません。クラスのマドンナ的な子がひょんなことからBL漫画を読み、その感想を友人たちと話し合うシーンがあります。うららちゃんと雪さんのように愛のある語り合いではなく、怖いもの見たさというか、からかいのようなエッセンスが混じっていて、面白おかしく読んでいます。性描写がどうのこうの~とかね。

それでも、ちゃんとそれが好きであることを否定しない友人がいたり、BL漫画を読んでいることがクラス中にバレてヒヤヒヤというストレスもありません。周りも気が付きながらも、暖かく見守ってくれている…あぁ、素敵な環境だなと思いました。これが昔なら、気持ち悪いとか悪趣味とか言われるシーンはあったんだろうなぁって思ってしまいました。良い時代になったなった。

物語は前半がうららちゃんと雪さんがBL漫画について語り仲を深めていく…という感じで進みます。もちろん、作品それぞれを愛して、ジャンルを愛して…というほほえましいシーンばかりでみているこちらものほほんです。

中盤からは、うららちゃんの挑戦がメインになります。その挑戦とは同人誌を描いてみること。うららちゃんと雪さんが仲良くなったきっかけとなるのが、『君のことだけ見ていたい』(著:コメダ優)という劇中作です。紆余曲折あってその同人誌を描くことになるのですが、ここがまたいいんです。熱いなぁ…若くて、キラキラしてて、いいなぁって。もちろん真っ直ぐに進むばかりじゃなくて、失敗もして、挫折もして、悲しい思いをすることもあるんですけれど、それら全部がピュアというかキラキラと眩しいんですよね。尊いってこういう感覚なのかなぁと思うくらいでした。

ここからはいいなと思った台詞をいくつか紹介します。

「才能がないと漫画かいちゃダメってことある?」(雪さんの台詞)

これは刺さりました。私はどうしても、しなくていい言い訳を考えてしまう性格だから…。才能がないから無理、もう年齢的に無理、技術的に無理、金銭的に無理…できない言い訳なんていくらでも用意できてしまいます。

小説を書いてみたいと思いつつも、私なんかにできっこない、どうせ飽きるし…と思ってしまっていた私には、とんでもなく刺さる台詞でした。

「まんがかくの楽しい?」(雪の台詞)

『あんまり楽しくはないです。自分の絵とか見ててつらいですし』(うららの台詞)

「そう」

『でも何かやるべきことをやってるって感じがするので悪くないです』

このシーンを全力で推したい。本当にキラキラしているんです。うららちゃん役を演じている芦田愛菜さんの表情と、雪さん役を演じる宮本信子さん、お二人の表情が実に良い。尊い空気が流れていました。

人って、するべき行動が解らなくなるから不安になるのだと思うんです。私はこれをしていていいのか、間違っていないのか、無駄なんじゃないのか…。そんなこと置いておいて、今すべきことを持っている。それだけで強いんだろうなぁって。今からでも、こうなりたいなって思いました。

「われわれのような小市民はあれよ、”せめて”の精神よ。マラソンのとき、せめてあの電柱まで頑張ろうとかさ。ドラマ始まるまでにせめて洗い物しようみたいな」(うららの母の台詞)

『”せめて”ね…』(うららの台詞)

うららちゃんのお母さんも良い感じざっぱりした性格の方。女手一つでうららちゃんを育て、大学や塾もなんとかなるさとうららちゃんを応援してくれています。素敵なお母さんという印象です。

この”せめて”の精神は見習いたいなと思うんです。面倒でなにもしたくない日って誰にでもあると思います。ちょうど今日がその日なんですけれどね…お仕事をする気にならない…けれど、せめてPCの電源を入れよう。マニュアルを読もうと思える。動きたくないときは”せめて”を思い浮かべようと思います。

「この年になったってね。いろいろ発見があるのよ」

最後はこちら。雪さんが娘さんに言った台詞です。75歳でBLの世界にハマった雪さんは自分の寿命があと何年くらいあって、あと何巻まで読めるのか…を想像するシーンがあります。その他、年齢による身体の痛みに耐えるシーンなど、老いを演出するシーンが多くあります。それでも、コミケや同人誌やサイン会といった、新しいイベントを知ることができる。私はまだ33歳ですから、雪さんの半分も生きていません。自分が老い始めている感覚が既にありますが、それでも発見していくことができるのが希望でもあります。

映画を全て観終えて、ふと浮かんだのは『耳をすませば』でした。生みの苦しみを描いたものをみると浮かんでしまうのかもしれません。私も、立ち向かいたいな…。まだ勇気はありませんが、せめて立ち上がることだけでも、一歩進むだけでも、意識しなければなりませんね。

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