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シンプリストになりたいのです

映画・君たちはどう生きるか 考察(ネタバレ注意)

9月某日。ジブリ最新作の「君たちはどう生きるか」を観てきました。…と言いますか、帰宅してそのままの頭でブログを書いています。公開するのは数日後の予定ですけれど、頭に残っているうちに書きなぐろうということで書いています。

何を言ってもネタバレになりかねないと思いますので、今回はネタバレしても大丈夫という方のみご覧いただけると幸いです。

ジブリ最新と言いつつ、上映開始されたのは7月中頃ですので、もう2か月以上たってしまいました。本当はもう少し早く行く予定ではあったのですけれど。それでもなんとか上映期間に間に合ってよかったです。

今回の映画の感想をつらつら書いていきたいと思います。

eiga.com

本作は「宮崎駿監督の自伝的要素を含む」と映画ドットコムに記載がありました。では、どのキャラクターが宮崎駿監督を表しているんだろう。観るまでは青サギが彼を表しているのかしらと思っていたのですけれど、青サギは鈴木敏夫さんっぽいなぁと。だからといって、大叔父様がそうなのだろうか、とも考えたのですけれど、これも何となく違うような気がします。ちょっと含んでいそうですけれど。

作中で何度か頭に浮かんだのは『ハウルの動く城』でした。「あ、今のシーンハウルっぽい」というシーンがいくつか。宮崎駿監督は作品の中に自分を投影したキャラクターを置く方ですけれど、ハウル宮崎駿監督が投影されたキャラクターですよね。あんなに解りやすく『ハウルの動く城』をアピールするということは、無関係というわけではなさそうです。

宮崎駿監督=ハウル、そしてハウル木村拓哉さん(声)、そして本作で木村拓哉さんは主人公 眞人の父親の役をされています。このお父さん、作中のなかではちょっと異質というか、行動や性格にやや難があるといいますか。過保護な面と、融通の利かないところとか…あれ、これって宮崎駿監督じゃね?と思うこともありました。

そう考えると眞人は、吾朗さんなのかしらん?とも考えました。眞人(吾朗さん)が青サギ(鈴木敏夫さん)にそそのかされて謎の建物(ジブリ)にいざなわれ、冒険(映画を製作)する…。父(駿さん)は助けたいけれど、眞人は建物にこもって出てこなくって成すすべなし。あれ、これって『ゲド戦記』と『コクリコ坂から』の制作時のエピソードやんって。

眞人の行く手を阻む鳥達は制作陣なのでしょうか。王様がいて国家や組織として成り立っているようなので、やはり制作関係なのか…。青サギ(鈴木さん)も制作サイドの人間ですし、味方にも敵にもなるのは、さもありなんって感じもします。そう考えると、鳥側に王がいるということは、鈴木さんよりも更に牛耳っている人がいて、その人が邪魔しているんだろうか…いやこれは邪推かな。

最終的に、大叔父様の跡を継ぐものはいませんでしたけれど、それはイコール、ジブリの跡継げる者はいなかったということなのかしら…血の繋がりのある者しか告げないってどういうことだろう……とここまで考えてみて、違和感です。そもそも答えが簡単に出過ぎているように感じました。

ジブリならもっと、「いぁあ、そんなの説明してくれないと解りませんよ!」みたいなのが多いのに、私が1回見ただけで「そうなのかなぁ」と思えるだなんておかしい。

「おそらく、わけがわからなかったことでしょう。私自身、わけがわからないところがありました」

www.asahi.com

試写で宮崎駿監督がこの映画について残した言葉です。

宮崎駿監督がわけがわからないところがある作品を私なんかが1度で読み取れるはずがありません。そう考えると、表層では「ジブリの跡継ぎ問題」を出しておきながら、更に奥ではもっと別の何かがあるのではないだろうか…そう考えるようになりました。

 

解りやすい答えを表層にすること、これにも理由がありそうです。

昨今の映画がどれも「わかりやすい作品」であること。先ほど考察した人物設定が間違っているとしても、ジブリに関する跡継ぎ問題について触れているというのは間違っていないように感じます。昨今の映画に求められることは深い考察ができることではなく、解りやすいエンターテインメント。考察してみようという人はあまり多くはないようです。ですのでそういうこの映画が伝えたいことを、あえてわかりやすく表でアピールすることで、そういったユーザーを満足させたいのだろうか、と私は考えています。

 

宮崎駿監督が仰っていた「わけがわからない」とはこの更に奥のことなのではないでしょうか。この更に奥は私にもまだわかりません。

ここからは疑問点を。主人公 眞人は火事で母親を亡くし、その数年後、母の妹が新たな母親となります。こういったことは当時はよくあったようで、戦争で夫が他界してしまった妻をその夫の兄弟が新たに妻として迎えるということは珍しいことではなかったと記憶しています。その実の母の妹であり、新しい母親となる女性が夏子さん。その夏子さんが不思議な建物に消えてしまい、それを助ける(連れ帰る)ために眞人は不思議な建物へ行き、そこから旅をします。まずこの夏子さんは何者なのだろうかという疑問。

そして夏子さんを求めて、生と死が渾然一体となった世界を旅します。まずは現世より下の世界。あの世を表しているようですが、やや地獄よりの世界のようでした。その生と死が渾然一体となった世界はどことなく「崖の上のポニョ」を彷彿させました。大津波が来たあと、ポニョやソウスケが居た世界はここなんじゃなかろうか…。私たちがいる現世と似ている、けれどどこか違う世界。リンクしていることもたくさんあるけれど、そうじゃないことも多いのです。

あくまで私の感じたことですけれど、この地獄よりのあの世のような世界から、天国を通り抜け、大叔父様と出会うシーンまでの間、今までの宮崎駿監督に関係する作品がちらちらと顔を出しているように思うのです。先ほども述べた、地獄よりのあの世は『崖の上のポニョ』、夏子さんが眠っている部屋やその後に青サギとあちらこちらを巡る道中は『千と千尋の神隠し』、大叔父様がいている場所は『ハウルの動く城』で、昔はハウルの叔父さんが住んで、ソフィーに特別に使っていいといったあの小屋、そして流れ星が流れていたのも『ハウルの動く城』を連想させます。ここまで、過去の作品とリンクするのは何故なのでしょう。宮崎駿監督はどちらかというと、解りやすいリンクを嫌われる方という印象があるのですけれど、心境の変化でしょうか。

あと、いろんな時代へ行ける扉、あれは何だったんだろう?作品を通していろんな時代世界へいけるということをイメージしたものなのか…そう考えると、本作は今までの総集編のようなものなのかしらん。今までの作品の補足とか答えを置いているとか??

それに13個重ねる積み木の意味は?どうして石はダメなのか?作中、石に拒まれるシーンがいくつかあったし、石舞台のようなお墓があります。石がテーマなのかなぁ。

13という数字は『風の谷のナウシカ』+スタジオジブリ宮崎駿監督が関与した『ラピュタ』『トトロ』『魔女の宅急便』『紅の豚』『耳をすませば』『もののけ姫』『千と千尋』『ハウル』『ポニョ』『アリエッティ』『風立ちぬ』そして『君たちはどう生きるか』なのかとは思うのですけれど。

そしてなにより、タイトルの「君たちはどう生きるか」ですよね。これは何だったんだろう?

そういった諸々が「わけがわからん」ではありました。このあたりは何度か見てみないとわからなさそう…というか見てもわからないんだろうなぁと。宮崎駿監督本人がわかっていないところもあるのかもしれませんし。

そういう点からみると、この作品は何層にも重ねられた層があって、今回私がみたのは表面に過ぎないのかもしれません。いくつもの層に別れてつくられた作品と言えばジブリではチャゲアンドアスカさんの曲のMVが印象的ですが…そういえば、先日劇場公開していましたね。この辺りになにか意図がありそう…。表面だけ観るなよってことでしょうか。

早くもDVD化が待ち遠しいですね。

そんなわけでいろいろと思ったことをつらつらと連ねていきました。頭の整理にはちょうどよかったです。ここまで読まれた方は既に映画を観られている方くらいだと思います。皆様の考察はいかがでしょうか。