「本は どなたを お読みになられますか?」
(劇中より引用)
小説「ビブリア古書堂の事件手帖」を読んだのは随分と前のこと。1巻の発売がされてすぐだったように思いますので、もう10年になりますでしょうか。小説はシリーズ6巻まで読んだように記憶していますので、それ以降もまた追々読んでいきたいものです。
今回は、ビブリア古書堂の事件手帖の映画版について綴っていきたいと思います。
あらすじ
主人公・五浦大輔は祖母の遺品から夏目漱石の直筆の署名が入ったと思われる「それから」を見つけ、鑑定してもらうため北鎌倉の古書店「ビブリア古書堂」を訪れる。
店主である女性・篠原栞子は極度の人見知りでありながら本に対して並外れた情熱と知識を持っており、大輔が持ち込んだ本を手に取って見ただけで、大輔の祖母が死ぬまで隠し通してきた秘密を解き明かしてしまう。
そんな栞子の推理力に圧倒された大輔は、、足を怪我した彼女のために店を手伝うことに。やがて大輔は、栞子が所有する太宰治「晩年」の希少本をめぐり、大庭葉蔵と名乗る謎の人物が彼女を付け狙っていることをしる。
(映画ドットコムより引用)
感想
栞子さんの繊細でやわらかなイメージを主演の黒木華さんが良い感じに演じられていてそこはとても素敵だと思いました。作中の世界観、カット割り、絵などとても「いい雰囲気」を感じることができました。
しかし残念ながら映画として誰かにオススメしたい!という作品とは言えません。ビブリア古書堂のヒューマンドラマでしたらそれでいいのでしょうけれど、「事件手帖」ですから…その肝心なミステリー部分がおざなりになっていたように思います。
冒頭にも述べましたが、ビブリア1巻を読んだのはもう10年以上前のこと…ですので細かい設定などは忘れてしまっているのですけれど、それでも大まかの筋は覚えています。そのなかで、結構変えてはいけない部分を変えてしまっているように感じました。私は小説を読んでいるから、解決する問題もありましたけれど、映画だけだと「え?あの問題は?」みたいになってしまいそうだなあって。続編を作るつもりで作られた作品ではないと思いますが、いろいろ解決していない…であったり、それは解決とはいえない…といったところが多かったように感じます。
また大輔君の祖母の秘密に関してですけれど、小説のなかの祖母のイメージとは違っていたのが違和感です。もう少し、罪悪感をもっていらしたように思うのですけれど。記憶違いでしょうか。んー。
ですので、レトロでありモダンであり、でも爽やかな独特な世界観を楽しみたいという方であれば楽しめるのではないかなと思います。
余談・小説からのもろもろ
ビブリア古書堂を読んでから、小説の舞台となった場所に興味をもつようになったように記憶しています。たしかビブリア古書堂は北鎌倉の駅から見えて…というような設定ではなかったかしらん。それで、北鎌倉に旅行する度に「あの辺りにビブリア古書堂があるのかしらん」なんて妄想するのが楽しかったのを覚えています。それ以降、さまざまな小説で「鎌倉〇〇物語」とか「浅草××喫茶店の△△」みたいなタイトルを観ることが増えて、そういった本ばかり買ってしまっていたなぁって、そんな記憶を思い出しました。
ビブリア古書堂を読むまでは、純文学には欠片も興味のなかった私。でもビブリア古書堂で栞子さんがあまりにキラキラとそれらの魅力を話すから、読んでみたくなって夏目漱石の「吾輩は猫である」を地元の図書館に借りに行ってみたりもしたなぁ…。結局、最初の部分しか読めませんでしたけれどね。
それでも、それまでは小説に対してあまり自分から読むほうではありませんでしたけど、今思えば「ビブリア古書堂事件手帖」や森見登美彦さんの小説がきっかけで本を好きになりました。要は「本を好きな人が出てくる小説」がきっかけというわけですね。
「古書が好きなんです。中に書かれている物語だけではなくて、人の手から手へ渡った本そのものに物語があると思うんです」
(劇中より引用)
映画内ででてくる栞子さんの台詞。とても良いなぁと思いました。たぶん、私自身がそういう何か好きなものをキラキラと話してくれる人が好きだから、小説の中でもそういった人を求めるのかもしれません。
映画をきっかけにそういった記憶がフワフワと湧いてきて、また読みたくなるのですから不思議ですね。こうして積読は日々増えていくわけです。
次はどんな映画を観ましょうかねぇ