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シンプリストになりたいのです

映画・浅田家!

もし 一生にあと1枚しかシャッターを切れへんとしたらお前は何を撮る?

(映画中より引用)

もし、あなたが普段写真を撮ることが好きだとして、あと1枚しかシャッターをきれないとしたら何を撮りますか?誰を撮りますか?今回は映画「浅田家!」の感想をネタバレ含めて綴っていきたいと思います。

浅田家!のあらすじについてざっくりと。

浅田家の次男である政志は12歳の頃、父からカメラを譲り受けた。父の影響で写真に興味をもち、写真の専門学校に通うほど。しかしさぼりが原因で卒業は危うく…教師から卒業制作をすれば卒業させてもらえるということに。そこで教師から言われるのが冒頭の台詞。

もし 一生にあと1枚しかシャッターを切れへんとしたらお前は何を撮る?

政志が被写体に選んだのは家族で、浅田家の思い出のシーンを再現し、学校長賞を受賞し無事卒業できることになる。卒業後はカメラの道に進むと誰しもが思っていたが、釣りにパチスロにと定職につくことなく2年が経った。撮りたいものが何か見つからない中、父との会話をきっかけに再びカメラをとること決めた政志。被写体はやはり家族だった。

彼が撮ったのは家族それぞれの「将来何になりたかったのか」の写真だった。まずは消防士になりたかったという父の夢をかなえるため、消防士のコスプレをし、実際に消防車に乗って撮影をする。母は、兄は…。様々なコスプレをした家族写真。それをもって東京に進出することにするのだった。

個展をきっかけになんとか出版にいたるが、売れ行きはいいとは言えなかった。しかし、しかし写真界の芥川賞といわれるような権威ある賞も受賞し、政志はプロのカメラマンとして一歩を踏み出すことになった。

その家族ならではの家族写真を撮っていくなか、2011年3月11日 東日本大震災がおこってしまう。政志が初めて家族写真をとった家族を心配し、被災地に足を運ぶ政志であったがそこで目にしたのは、かつての面影は一切みられない 一面の瓦礫の山だった。あちこちで家族を探す中、冬の寒空のした、もくもくと泥まみれの写真を洗う青年と出会う。政志は自らも一緒に、その活動を続けるのであった。

 

ざっくりとですが、物語の大筋はこんな感じです。この映画は私が尊敬しているとあるカメラマンの方からオススメをいただいた作品です。実は宣伝CMの段階で東日本大震災大震災が出てくることがわかり、見ることに対してしり込みしてしまっていました。誰かのリアルな死を作品でも観るのは辛かったからです。ただ実際に映画を見てみると、全然重苦しい作品ではなく、むしろさわやかなんですよね。前半はむしろコメディ映画のようですらあります。

政志がカメラマンをしていくなかで、多くの人と関わるなかで、どうしても「命」は切っても切れないものです。家族写真を必要とする人にも、娘の成長を記録したいという方もいれば、いつかは…むしろ もうすぐ亡くなってしまうかもしれないことを頭のどこかで理解してしまっている家族との写真を遺しておきたいという方もいます。そういった中での成長というか葛藤というか、みていて苦しいシーンもありましたけれど観終わった後は、とてもすっきりとした読後感の良いと言いますか、そんな作品でした。

被災地での写真保管やそれらのボランティア活動に関しては、全く知りませんでしたので勉強になりました。こうして写真を1枚1枚洗っていたのですね。大変な作業だったでしょう。賛否両論もあったことでしょう。それでも映画内では約8万枚の写真のうち約6万枚が家族に返還されたとのこと…。語彙力が低い自分が悲しくなりますが、なんて素晴らしいことだろうと 思いました。写真はただの紙切れではありません、思い出であり、なにもかも失ってしまった人であればそれは宝物であり、唯一遺された遺品ですらあるかもしれないのですから。

ここまでみると冒頭にあげた言葉の重みが増してしまいました。

もし 一生にあと1枚しかシャッターを切れへんとしたらお前は何を撮る?

私もやはり家族写真なのかなと思いました。夫や実家の愛犬たち、両親や妹夫婦でしょうか。私には家族写真を撮った記憶はありません。しかし、自分の子どもの頃の写真は山のようにありましたから、恵まれた環境だったのだと思います。今予定があるわけではありませんし、産みたいのかもわかりませんけれど、もし、もし自分が子宝にめぐまれることがあれば子どもの写真と合わせて家族写真も残していければと思います。

とある日の夫との写真。こうした細やかなものをのしていきたいと思います。