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シンプリストになりたいのです

読書・月の立つ林で

図書館司書をしていたけれど、別段読書好きというわけでもない私は年に数冊くらいしか本を読みません。作者は大体固定化されていて、森見登美彦さん、青山美智子さん、伊与原新さん、小川糸さんの新作が出たら読むという感じ。いま名前を挙げた方の本はどの作品をとっても好きです。しかしながら自分の中で読書に対する波があって、月に5冊以上読む月もあれば、全く読まない状態が半年以上続くことも。個人的には量が多くなくてもよいので、コンスタントに読んでいきたいと思うのだけれどもこれがなかなか難しいのです。数ページ読みだしたら、するすると最後まで読めることが多いのだけれども、本を開くまでに骨が折れます。最近では数ページ読んでやめてしまう本も多く、どうしたものか…。面白くないと思ってしまうと続きを読む体力がもたないのです。

なのでここで読了記録として紹介する本というのは、私が最後まで読めた本になるだろうと思います。数は少ないですが、定期的に映画記録や読書記録も載せていきたいと思っています。ネタバレを含むこともあるし ほめるばかりの感想ではないので、まだ読んでないし、賛成意見以外認めないというかたは向かないように思います。

 

そんなわけで今回読んだのは 著:青山美智子 さん 『月の立つ林で』を紹介します。簡単なあらすじを紹介。

 

長年勤めた病院を辞めた元看護師、売れないながらも夢を諦めきれない芸人、娘や妻との関係の変化に寂しさを抱える二輪自動車整備士、親から離れて早く自立したいと願う女子高生、仕事が順調になるにつれ家族とのバランスに悩むアクセサリー作家。
つまずいてばかりの日常の中、それぞれが耳にしたのはタケトリ・オキナという男性のポッドキャスト『ツキない話』だった。
月に関する語りに心を寄せながら、彼ら自身も彼らの思いも満ち欠けを繰り返し、新しくてかけがえのない毎日を紡いでいく――。

(ポプラ社より引用) 

www.poplar.co.jp

 

 

青山美智子さんの描かれる作品の特徴としては、一見すると関係のない人物たちの短編集が実は1つの場所や事象が連鎖していて、最終的には一つの輪が完成するというような短編連作のもの。気が付かないうちに築かれた人々の縁が輪になり、結ばれていく。また全ての著書がつながっているようで、ココアに出ていた人が他の本に…といったことがよくあります。そのつながりは人物だけでなく、書籍であったり演劇であったりと様々。

私はこれはメリットでありデメリットでもあると思っています。そういった繋がりを見つけるのは確かに楽しいです。「あっ、この人もしかして?」と探す楽しみもあります。しかしながら、毎回これでは物語に集中できないし、先読みしてしまう癖がつくんですよね…。この流れで行くと最終的に○○につながるんだなと、そうなると それはもう読書ではなく、オチ当てゲームになってしまうのです。自分の予想を超えてくれば作者の勝ちで、そうでなければそれは予測できうるつまらない作品として評価されてしまう可能性があります。そんな話を西尾維新先生か岩崎夏海先生かの著書で読んだ記憶があるようなないような。それが勿体ないような気がしてならないのです。私がしたいことは読書であって著者との勝負ではありません。素直に文章を楽しみたいですし、基本勝負をするとしても「負け」の状態でいたいものです。

そんなわけで今まで青山さんの著書をほとんど読んできた私としては若干、その展開に飽きがきていると言ってしまえば嘘ではありません。当然物語も面白いし最後は優しい気持ちになります。しかしながら、そろそろ「全く違う手法で描かれた、全く違う世界線の物語が読みたい」と少し思ってしまいました。我儘な話ですけれど。

 

その上で、今回の感想を綴ります。

今回、キーとなるのはポッドキャストでタケトリ・オキナという男性が配信する「ツキない話」というチャンネル。タケトリ・オキナに関しては何も情報が開かされていません。声質からして男性であることくらいしか解らない。若いのか、本当に翁なのかそれすら解らない。ただ毎朝7時になると10分程の配信をすることを律儀に続けているということだけわかるのです。

ちなみに、ポッドキャストって何?から入ったアナログ人間私は、まずポッドキャストググるところからです。なるほど、個人でできるラジオ配信のようなものらしい。音楽を配信する人や、ラジオ感覚でトークを配信する人と様々なよう。ちなみにAmazon musicで調べてみると、芸人の方の配信や、教育系のチャンネルもありました。実際に天体に興味があるので聞いてみましたが、なかなか興味深い配信でした。誰かがつらつらと話すのを聞くのはYouTubeをラジオ感覚で使用している私には有難いし、バックグラウンドで再生できるので音声だけで楽しみたいBGM感覚のモノにはとてもいいだろうなと思います。何より検索で「ツキ」と入力すると「ツキない話」がサジェストに出てきたので、皆考えることは同じらしいですね。そういう共有ができたのが今回一番の収穫かもしれません。当然、そんなチャンネルは存在しません。誰か作ってくれないかな。

このツキない話という配信では、毎朝 その日の月について話されています。月と地球の大きさの違いであったり、距離が少しずつ離れているというはなしであったり、そういった豆知識を教えてくれます。そのなかでも重要となるのが「朔の月」。所謂新月。「朔の月」で新月だとすぐわかる人はきっと犬夜叉が好きなはず。勿論私はそうです。(高橋留美子先生大好き世代)。

言われてみて気が付きましたが新月の日でも当然、空に月は浮かんでいます。しかし、太陽の光を反射することのない月はどこにも姿をうかがうことはできない。大体の予測をして隠れた星から位置を割り出したり、もしかしたらとてつもなく目を凝らせば見えるのかもしれません。とにかく、新月の夜にも月は存在しているのに、どうして私は新月の日は月がないと思ってしまうのでしょうか。それが不思議でした。見えているモノだけに囚われているような、そんな気持ちになりました。

 

ちなみに今回初めてレゴリスについて知りました。

レゴリスは、固体の岩石の表面をおおう軟らかい堆積層の総称。

ja.wikipedia.org

月が盆に例えられ、まるで平面のように丸く見えるのは、このレゴリスのおかげらしいです。月の表面に覆われているレゴリスは、太陽からの光を乱反射することで、輝きを増し、地球からみてもあんなに美しい円形を観ることができるらしい。知りませんでした。月も自分が綺麗に見えるように、化粧をしているのでしょうか。自身の素材を活かした美しさで輝くことができることがうらやましくもあります。

 

このように、ツキない話は視聴者たちに新しい発見をもたらしていきます。そういった発見や知識が日々の生活に彩を与えてくれる、そんな作品でした。青山さんの作品には、心からの悪人はあまりでてきません。少なくとも、主人公となる人たちや、その人を支えてくれる人たちは清らかな人々が多いように思います。ですが現実はそこまで綺麗じゃない。それでも、ほんの一時、すがるかのように優しさに浸るのも悪くないとそう思うのです。

 

さて、今日の月はどんな月でしょうかね?