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シンプリストになりたいのです

映画・LION 25年目のただいま

Google Earthって使ったことがありますか?

Google Earthとはインターネット上でみることができるバーチャル地球儀システムで、世界中の衛星写真をもとに、まるで本当の地球儀を回しているかのように見ることができます。ストリートビューの機能もあって、実際にその場に下り立ってみることもできるんで、一度見出すといつまでも暇つぶしできてしまいます。(Google Earth)

もし、あなたがGoogleEarthでどこかを探すなら、どんな場所を探すでしょうか?

今回は『LION 25年目のただいま』という映画をみました。感想をネタバレ交えて綴っていきたいと思います。

あらすじ

1986年、インドのとある小さな街。サル―という少年は母、兄、妹と貧しいながらも仲良く暮らしていました。そんなある日のこと。仕事にでる母に留守番を頼まれたサル―は兄と、妹の面倒をみていました。しかし、兄もそろそろ仕事にでなければなりません。

サル―はまだ5歳ですが、母や兄の力になりたいと思っていました。そこで兄の仕事に自分も連れて行ってほしい、力になりたいと言い出します。もちろん最初は子どもには無理だと兄は断りましたが、何度もサル―が駄々をこねるので連れていくことにしたのでした。

兄とサル―は仕事を求めて夜の電車に揺られます。ただまだ5歳のサルーに夜間の仕事は難しく、結局は車内で眠気に負けてしまうのでした。そんな状況で2人で仕事を探しにいくことは難しく、兄はサル―を駅のホームにあるベンチにのこし、その場を離れるのでした。

兄は念入りに「すぐに戻るから、その場を離れないように」とサル―に言いましたが、寝ぼけまなこだったサル―には聞こえていなかったようです。しばらくして目を覚ましたサル―は、兄の言いつけを破ってあたりをを探しまわります。けれどどこにも見当たりません。駅のホームにはサル―以外誰もいないようです。

あたりをよく観察するとホームからはタンクのような黄色い建造物がみえます。更に反対の線路には列車が停車しているようです。サル―は一人、車内に潜り込み兄を探し始めます。けれど、やはり兄は見つかりません。そしてあろうことか、サル―はその電車のなかで再び眠りについてしまうのでした。

サル―が再び目を覚ましたとき、既にその列車は動き出していたようです。回送列車だったようで、サル―以外には誰も乗っていません。そしてそのまま2~3日かけて大都市カルカッタ(コルカタ)までやってきてしまったのでした。

ホームに降り立ったサル―は必死で兄や母を探します。けれど誰もサル―に目もくれません。困り果てていたところで、同じ年ごろの子どもを見つけます。どうやらその子も一人のようです。そしてあとをついていくことにしました。その先には、サル―と同年代から少し上くらいの子ども達が数人でグループになっているようです。サル―は彼らと共に眠りにつくのでした。

しかし、夜も随分と深くなったころ。突然の悲鳴でサル―は目を覚まします。子どもを狙った人さらいがやってきたのです。そして子どもたちは彼らに捕まってしまいました。サル―は命からがらなんとか逃げ延び、様々な危険にさらされながらも彷徨い続けるのでした。

サル―が迷子になって2ヶ月経過した頃。とある青年がサル―を発見し、警察へと案内してくれました。しかし、サル―の出身地を聞いても誰も分からず、更に自分の母の名前すら憶えていなかったためを探す手立てはありません。新聞にも迷子として掲載されましたが、誰からの連絡もありませんでした。

サル―は孤児院のような場所にいれられ、新たな生活が始まります。そして間もなく、オーストラリアに住む夫婦がサル―を養子に迎えたいという話が出て、サル―はインドからオーストラリアへと旅立つのでした。

オーストラリアでサル―を迎えてくれたスーとジョンはとても心優しい夫婦でした。サル―を実の息子のように愛してくれました。しかしその後、サル―と同様に養子に迎えられたマントッシュとはあまり仲良くはなれませんでした。

それから20年程経過して、サル―も立派な大人になりました。学校に通い、恋人や友人もでき、幸せに暮らしていました。そんなある日、サル―は友人の家で子どもの頃にみたお菓子を目にします。それがきっかけで、これまで恋人や友人たちには言っていなかった自分の過去について話すのでした。

そして友人のひとりから、Google Earthなら地球上のどこへでも行くことができることを教えられます。また当時の列車の速度が分かれば、カルカッタからのだいたいの距離は掴めますから、その範囲の駅を探すのはどうだろうか…と。しかし、2~3日も列車に乗っていたわけですから、相当な範囲を探さなければなりません。サル―はこの話はここまでにして、恋人と家に帰るのでした。

ただ家に帰宅してベッドに入っても、なかなか眠りにつくことができません。そこでサル―はパソコンでGoogle Earthを開き、朧気な記憶を頼りに故郷を探し始めるのでした…。

感想

これはきっと生涯印象に残るであろう作品でした。インドで迷子になった5歳の少年が25年後にGoogleEarthで故郷を探し出した。これは実話を元にしてつくられた物語だそうです。

サル―の葛藤と、様々な問題と、そして周囲の暖かさで胸が締め付けられるようでした。自分は今、幸せに生活することができている。でも今、この瞬間も自分の母や兄たちは自分を探し回っているかもしれない。故郷を探し求めることは、新しい母であるスーを傷つけてしまいそうで家族に話すこともできない。そしてこの苦しみは、誰にも理解されることもない。みていて辛い内容でした。

GoogleEarthで故郷を探す。たった5歳で途切れてしまった記憶を頼りに探すのはどんなに大変なことだったでしょう。実際はどれだけの時間を費やしたのでしょうか。計り知ることもできません。ただ、こういった技術の革新によって救われるものがあるという事実は希望にもなりました。反面、悪用が怖くもありますけれど。あと実際はFacebookも大いに役に立ったようです。作中では触れられませんでしたけれど。なんにせよ、SNSやこういった技術は使い様なんだなと改めて思いました。

この映画によると『インドで行方不明になる子どもは、年間8万人』ということです。2017年に劇場公開されている作品ですので、今は異なるでしょうけれど多くの子どもが行方不明になっていることに違いはないでしょう。そして子ども達にどんな危険があるのかも取り上げられていますが、これも氷山の一角に過ぎません。映画のラストは概ねハッピーエンドで幸せな気持ちになるのに、あとから重く ズーンと圧し掛かるものがありました。よかったね と思う自分と、手放しで喜べない現状を直視するのが辛い自分が両立しているようでした。

ちなみにオーストラリアに養子に来てから大人になるまでの20年程は、大きく端折られています。そこに物足りなさを感じる人もいるだろうなぁと思いつつ、個人的には この物語 には必要ないと感じました。サル―の人生の物語というより、サル―が帰る物語ですから。

あと物語とは関係ないのですが、養母・スーの声を吹替版では田中敦子さんがされています。とても好きな声優さんだったので、そのあたりでも涙なしにはみられない作品でした。スーの愛情の深さも染みるし、田中敦子さんの声も染みる…。

いろんな感情が綯い交ぜになりましたが、みてよかったです。

よもやま話

映画を見終えたあと、GoogleEarthで実家周辺を散策してみました。年に1~2回は帰省しているので、まぁ見慣れた景色なんですけれど。

そのあと、今まで住んでいた場所をいくつか巡ってみました。10歳から20歳くらいまでの10年程を過ごした家の周囲は大きく変わっているようで、ちょっとびっくり。家の裏は大きな田んぼでしたが、埋め立てられ、今は家が建っているようです。それ以外も畑だった場所が駐車場になっていたり。

変らないようでいて、時代と共に移ろっているのを知り、悲しくなったのは何故でしょうね。今はもう無関係な場所を執拗に見るのは、ちょっと憚られるので詳細までは見ませんでしたけれど、本当に縁が切れてしまったんだなぁ…なんて。今 住んでいる賃貸も、そう遠くない未来に引っ越す予定です。数年後には同じように見ているのかな。そう思うと、今のご縁を大切にしなければなりませんね。

次は何処に住むことになるのやら。