珍しくレイティングがR15+指定の映画をみまして。グロテスクな表現・暴力シーン・カニバリズムなどに苦手意識のある方は、どうぞお気を付けください。
今回は『スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師』という映画をみました。感想をネタバレ交えて綴っていきたいと思います。
あらすじ
19世紀。一人の男が船乗りの青年 アンソニーとロンドンへとやってきました。ロンドンへの憧れを抱くアンソニーに対して、男は強い恨みを抱いているようです。
物語は15年前までさかのぼります。理髪師であるベンジャミン・バーカーという男は美しい妻ルーシーと、愛する娘と3人で幸せに暮らしていました。しかし、その妻を見初めたタービン判事は、無実の罪をベンジャミン・バーカーに被らせて彼を流罪にしてしまったのです。そしてそのベンジャミン・バーカーこそ、この男なのでした。
ロンドンに到着すると2人はそれぞれの道へと進んでいきました。男は、とあるミートパイ店を訪ねます。その店はロンドンで一番まずいミートパイと言われるほどで、閑古鳥が鳴き喚き、店内は虫だらけ。主人のラヴェット夫人は早くに夫を亡くし、一人でミートパイ店を切り盛りしているようです。ただ情勢の悪化などで肉も手に入らず、きちんとパイをつくることもできないのでした。
男はもともと、そのミートパイ店の2階で理髪店を営んでいたのです。彼はラヴェット夫人に自分が流罪になってから何があったのか、妻や娘はどうしているのかを聞きます。ただ残念なことに、妻ルーシーはタービン判事から受けた暴力により心を病み、砒素を飲んでしましました。娘のジョアンナもタービン判事に軟禁されているといいます。愛する妻と娘に会うことだけが支えで15年耐えてきたというのに、その夢はかないません。彼は復讐することを誓います。彼は”スウィーニー・トッド”と名乗り、ラヴェット夫人が大切に隠し置いていた彼の剃刀を受け取って理髪店を再開するのでした。
一方、アンソニーは窓辺で歌う一人の少女に心を奪われます。白く透き通るような肌に金色の髪が美しい少女でした。彼女こそタービン判事によって軟禁されているジョアンナです。しかしアンソニーがジョアンナに見惚れていたところを、タービン判事に見られてしまい、タービン判事とその部下バムフォードによって追い出されてしまいます。それでもアンソニーはジョアンナを連れ出すことを決意するのでした
タービン判事への復讐を決意したトッドは市場へやってきました。そこでは理髪師アドルフォ・ピレリという男が偽物の育毛剤を販売していました。トッドはそれが偽物であることを見抜き、さらに民衆の前で髭剃り競争を行うことになりました。審判には、たまたま居合わせたバムフォードが行います。勝負はトッドの圧勝で、更にバムフォードとのコネクションができました。
しかし、ピレリはトッドの正体がベンジャミン・バーカーであることを知っていたのです。ピレリはトッドをゆするために店にやってきました。トッドの秘密を隠す代わりに売り上げの半分を寄こせと脅すのです。トッドは秘密を守るために、ピレリを殺害してしまうのでした。ところでピレリには身のまわりの世話をするトビーという少年を連れ歩いていました。トビーは孤児院にいましたが、ピレリに引き取られたのだといいます。トッドはトビーも始末しようとしますが、彼の身の上に同情したラヴェット夫人はトビーを引き取ることにして事なきをえたのでした。
あくる日。タービン判事は今日も罪なき少年に絞首刑の判決をくだし仕事を終えました。家までの道すがら部下のバムフォードに相談をします。ジョアンナを妻にしようと考えているが、反応は良くなかったようです。そこでバムフォードはトッドの理髪店で身なりを綺麗に整えることを勧めます。
これはトッドにとっては復讐の千載一遇のチャンスです。やってきたタービン判事は、目の前にいる男が、自分が流罪にしたベンジャミン・バーカーであることに気付きもしません。トッドは油断するタービン判事の首の剃刀を近づけます。
しかしあと一歩というところでアンソニーが店内に飛び込み、更にはジョアンナと駆け落ちすることを口走ってしまうのです。それを聞いたタービン判事は当然怒りだし、髭剃りどころではありません。アンソニーやトッドに対して怒って帰っていくのでした。きっと二度とタービン判事がトッドのもとにくることは無いでしょう。トッドは怒り、アンソニーを追い出します。騒ぎを聞きつけてやってきたラヴェット夫人は、なんとかトッドの怒りをなだめるのでした。
一息ついたところで、ピレリの亡骸をどうするか という話になりました。このまま置いておけば腐敗してしまいます。トッドは秘密の場所に埋めるといいます。そこでふと、ラヴェット夫人はライバルのミートパイ店が猫の肉を使っていることを思い出したのです。猫1匹からつくれるミートパイ店はせいぜい数個。しかし、ピレリだとどうでしょう?
トッドはタービン判事への復讐がなされるまで足のつかない客を殺害することで怒りの捌け口とし、更にその亡骸をミートパイとして売りさばくことで、亡骸の処理と商売の両方を叶えることができると考えつくのでした…。
感想
ティム・バートン作品の中でも一番過激で、グロテスクな作品といえる『スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師』。R15+というレイティングではありながら映像がそこまでグロテスクであるというわけではなく、どちらかというと精神的にグロテスクな作品なのではないでしょうか。血しぶきが飛んでも、それはいかにもな赤であまりリアルではありません。それよりもやっぱりカニバリズム的な話やその他もろもろの方が、いろいろと想像してしまって しんどいものがありました。
オチを言ってしまいますが、基本的に誰も幸せにならないんですよね。もしかしたら生き残った数名は幸せになるのかもしれないですけれど、心から幸せかというとそうは言えないんです。そういうところも少し想像したらわかる作品になっていて、やっぱり想像すればするほど しんどいものがありました。
でもだからといってバッドエンドかと言われると、どうなんでしょう。綺麗に片付いたような気もしなくはない…というか。『レ・ミゼラブル』のホラー版みたいな…いや、ちょっと違うんですけどね。でも両方ミュージカル映画ですから。ね。
ちなみにどうしてこの映画をみたかというと、アラン・リックマンがみたかったからなんです。彼がでている映画でハリポタ以外で何か見たいと思って探したのですが、アマプラでもネトフリでも無料でみられる好みの作品がなかったんです。『ダイハード』や『パフューム』と、どれにしようか迷った結果、つい最近ティム・バートンの『コープス・ブライド』をみたので、監督つながりでこれにするか、と決めた感じです。
で、肝心のアラン・リックマンですが…いぁああかっこいい。まさに私が理想とするイケオジ像!あ、演じているタービン判事は無理ですよ。けれど、この溢れ出る色気と言いますか、オーラと言いますか…かっこよかったです!もう、アラン・リックマンを見ることができただけでも大満足でございます。
結論として「あまりお勧めはしないけれど個人的には面白かった」ですね❀
よもやま話
幼い頃。みる映画といえばアニメ派出の映画がメインで、実写の映画は数えられるくらいしかみることはありませんでした。そんな私が映画をみるようになったのは、大学生くらいから。更に卒業後は就職もせずに映画館でのアルバイトを始め、映画はぐっと身近なものになったように記憶しています。
ただその頃の映画の見方は、今にしてみるとあまり気持ちの良いものではありませんでした。「とにかく数をこなして知識を深めないとっ!」みたいな周囲との競争心のようなものばかりが先に立って、作品そのものと向き合えてはいなかったように思います。私がたまに「みたことは覚えているけれど、中身は覚えていない」というような作品はその頃に通り過ぎたものが多いです。
今回みた『スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師』もその1つ。確か大学生くらいの頃にDVDをレンタルしたのですけれど、最初と最後だけ見て間はちゃんとみていなかったんです。ここ数年は、そういう中途半端にみた作品を改めてみることも多く、なんだか再履修をしているような不思議な感覚です。
「誰かとの競争のために映画をみる」ということはなくなりましたが、それでもたまに義務感で映画をみている自分がいます。そこまでしなくていいのだ。無理はしなくていいのだと、自分に言い聞かせて映画とは適度な距離感を築いていけたらいいなぁと改めて思うのでありました。