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シンプリストになりたいのです

映画・ミセス・パリス、パリへ行く の感想

大人になったら誰しもが、ハイブランドのバッグや財布の1つや2つは持っているものだと思っていた思春期の頃。プラダやヴィトンのバッグを持って、ディオールの香水をつけて、ドルガバの下着を履いて…。高校・大学時代には背伸びをして、ディオールの香水を付けたり、ヴィトンのバッグを持ったりしたこともありました。

結局ミニマリストになってすべて手放して、今持っている鞄は無印良品のリュックとGreanのショルダーがメインですし、財布に至っては自分で制作したものを使っています。

今はハイブランドに対して、特に思うところもないといった距離感でしょうか(そもそもあまり物欲がない)。でもたまに、ハイブランドのドレスや装飾品を見たときにはやっぱり素敵だと思いますし、洗練された美のようなものはいくつになっても憧れるのだなぁとしみじみ思います。身の丈にあっていない自覚があるから、欲しいとまでは思わないのかもしれませんね。

今回はそんなハイブランドのなかでもディオールをメインにした映画、『ミセス・パリス、パリへ行く』を見ましたので、感想などをネタバレ含めて綴っていきたいと思います。

あらすじ

1950年代、第二次世界大戦後のロンドン。終戦からしばらくたつというのに、出征した夫からの音沙汰はありません。それでもミセス・パリスは日々慎ましく暮らして、夫の帰りを待っていました。しかし、ある日1通の便りが届きます。そこには、夫は戦死していたという事実と、遺品の指輪が同封されていたのでした。

ミセス・パリスは日々、家政婦としていくつもの家に通っています。そんななかで、1枚の美しいドレスと出会います。それはクリスチャンディオールオートクチュールドレスでした。

ミセス・パリスは今まで華美な服を纏うことはありませんでしたが、そのドレスに一目ぼれし、自分もパリのクリスチャンディオールでドレスを仕立てようと決意します。それからはこれまで以上に仕事に励み、また幸運も味方して、ドレスを仕立てるだけの費用を蓄えることができました。そしてロンドンを離れ、念願のパリへと旅立つことになりました。しかしパリは、ゴミ収集業者のストライキが発生し、街中はゴミで溢れかえっています。

なんとかクリスチャンディオールまで辿り着きますが、当時はまだ誰しもがドレスを購入できるという時代ではありませんでした。ファッションショーはごくごく限られた大金持ちのお得意様しか見ることすらできなかったのです。なんとか店内に入り込むことはできましたが、ミセス・パリスはショーを見ることすら許されません。自分はお金も準備していて、ロンドンからはるばるやってきたことを伝えますが、受付の女性は頑なにミセス・パリスを中に入れてはくれないのです。そんな様子をたまたま見ていたジェントルマンが、ミセス・パリスを自分のゲストとしてショーに参加できるようにしてくれました。

ショーを見て、決めたドレスを購入して、すぐにロンドンへ帰ればいいとミセス・パリスは考えていましたが、実際はドレスを決めた後に数日かけて採寸や仮縫いなどをしてドレスが完成します。どれだけ急いでも1週間はかかるのです。同僚に仕事の交代を頼み、またスタッフの一人が空いている部屋に泊めさせてくれたことで、ミセス・パリスは無事、ドレスを購入することができたのでした。

それから、採寸、仮縫いのため数日パリで過ごすようになったミセス・パリスは、今クリスチャンディオールの店内ではいくつかの問題が発生していることに気がつくのでした…

よもやま話

この映画を見る前から、タイトルとあらすじはなんとなく知っていたんです。家政婦をしている女性が、一枚のオートクチュールドレスに魅了され、自分もドレスを手に入れるという夢を叶えるために一念発起してパリへ向かす。そこでいくつもの軌跡を起こして幸せを掴んでいく…みたいな。そんな前情報だったような気がします。ただ映像やティザーは見ていませんでした。

ここまでのあらすじなんかを読んで、ミセス・パリスは何歳くらいの女性だと思いますか?

私はついつい、ミセスというくらいだから既婚女性。でもドレスに魅了されるという事であれば、私と同じ年代か40代くらいまでかしら?なんて思っていたんです。映画をみてみてびっくりです。ミセス・パリスは60歳手前の女性だったんです。あまり色眼鏡で世の中を見ないように心掛けているつもりでも、まだまだだなぁと反省です。

何歳になってもおしゃれは楽しんでいいし、夢をみていいんだということを教えてくれる映画なのだと思います。とてもほっこりしました。

ただオートクチュールドレスがディオールのドレスであるということを知りませんでしたから、ディオール賛美の内容にちょっと「ん?」となってしまいました。物語というより、衣装(ブランド)ありきの映画なのでは…?と。それを理解したうえで、物語と映像を楽しむのが良いと思います。

さらに、よく見てみると1950年代の社会問題なんかがふんだんに描かれていて、その辺りも面白かったですね。クリスチャンディオールが広く世界に愛されるようになった背景に、こんな物語があるといいなぁなんて思いました。

ブランドと映画

『ミセス・パリス、パリへ行く』をみたら、大抵の方は『プラダを着た悪魔』や『ココ・アヴァン・シャネル』の映画を思い出すのではないでしょうか。私はそうでした。

プラダを着た悪魔』は、服装は冴えないけど頭脳明晰な女の子が一流ファッション雑誌の編集部で働くことになり、鬼のように怖いけどバリバリ仕事ができる上司に振り回される日々が始まります。最初は上司やファッション業界に対して反発しつつも、どんどんとその魅力に引き込まれていきます。そして最初はファッションに興味のなかった女の子が、プラダを纏って豹変し…みたいな物語。めちゃくちゃ好きで、DVD持ってるくらい何度も見ています。

ココ・アヴァン・シャネル』はシャネルの生みの親である、ココ・シャネルの伝記映画です。ラストにかけて、これからの時代を生きる女性が纏うべきドレスは、腰周りをコルセットで締め上げた身軽に動き回ることのできないドレスではないのではないかと、新しいファッション・スタイルを模索していくところが印象的な映画でした。

調べてみると、こういうブランドをテーマにした映画が他にもあることを知りました。イヴ・サンローランだったり、マルジェラだったり。新しい扉を見つけたような気分です。

既にみた3作品に共通して言えるのが、やっぱり衣装がどれも可愛いんです。そして見せ方も良いんです。魅力的に見せる時の衣装と、そうではないときの衣装のメリハリがはっきりしているので、さらに輝いて見えるんですよね。

語弊がある言い方かもしれないのですが、女子力のあがる感じと言えばいいのかしら。キラキラして見えるから不思議です。

こういった映画に限らず、映画で使用される衣装は結構みてしまいます。『キャロル』や『アメリ』、『ヘアスプレー』、『ヘルプ』の衣装も可愛かった記憶があります。映画の物語を楽しむだけではなくって、こういった楽しみも良いかもしれませんね❀