あなたのすむ街に本屋さんはありますか?
まちの本屋さん が随分と減り、大型書店に集約されるようになった、といわれていましたが、気が付けば その大型書店も数を減らし始めている…なんて話もちらほら。すむ街に本屋さんがない という方は実は そう 珍しくなかったりします。
(大型書店がなくなる! 2022年01月26日 | 大和総研 | 鈴木 文彦 、本屋さんが減っている - 産経ニュース 、URLを参考)
今日はそんな本屋さんにまつわる映画『丘の上の本屋さん』を見ましたので、感想をネタバレ交えて綴っていきたいと思います。
あらすじ
イタリアのとある丘陵地帯。その美しい丘を見下ろすような場所に、小さな古書店がありました。店主のおじいさんはリベロ。毎日、ちょっと変わった客たちの相手をしています。
ある日、リベロは1人の少年に出会いました。少年は店先に置いてある本を眺めているようですが、手に取ろうとはしません。リベロは気になって少年に声をかけました。少年の名前はエシエン、数年前に移民としてやってきて、今では会話も読み書きもスムーズにできるそうです。ただ、エシエンには本を購入するお金がありませんでした。
本に興味があり、好奇心旺盛であるエシエンを気に入ったリベロはある提案をします。店に置いてある本を1冊貸し出そう、そして読み終わったら必ず返しに来ること。エシエンは喜んで1冊のコミックを借りて帰るのでした。
次の日、早速エシエンは古書店にやってきました。もうコミックを読み終えたのです。そこでリベロは貸していた本を受け取り、また新たな1冊を貸し出すことにします。こうして、エシエンは毎日のように本を読んでは店にやってきて、新しい本を借りていくようになります。コミックは小説になり、伝記になり、少しずつ変化していきます。そして、2人はその本について語らうのがお決まりとなっていました。
リベロ『注意深くお読み、本は2度味わうんだよ』
エシエン「どうして?」
リベロ『最初は理解するため。2度目は考えるためだ』
(作中より)
リベロは本の登場人物のことや、本との向き合い方、様々なことをエシエンに伝えていきます。
エシエン「厚いから1日で読むのは無理かも」
リベロ『ゆっくり読んでごらん。すると中身が体にしみ込んでいく。そしてある日、不意に現れるんだ』
(作中より)
こうしてリベロとエシエンは年齢も国籍も超えて、友人となっていきます。そんな日々が続いたある日。リベロはエシエンにとある1冊をプレゼントします。それはエシエンにとって、重要な1冊となるであろう本でした…
感想
イタリアの美しい景色と、優しい音楽、そして建築美。見ているだけで心安らぐ作品でした。物語は淡々と進むので、やや眠気を誘います。その空気感がいいのですけれど。
特に良かったのが、やっぱりリベロ。優しくて、物知りで、どこかユーモラスなおじいさん。こういうおじいさんと知り合いになれたら、さぞ楽しいことでしょう。お話を聞いているだけで、幸せな時間が過ごせそうです。
更に興味深いのが、本のチョイスです。最初、エシエンは自らの好みでコミックを選びます。しかし途中からはエシエンに合わせてリベロがチョイスした1冊を貸し出す…という流れに変化するのです。『ピノッキオの冒険』『星の王子さま』『白鯨』『イソップ物語』…そしてプレゼントする1冊。どの本も名前を聞いたことのある、もしくは読んだことのある有名な1冊ばかり。しかもどれも世界的に有名で、いろんな言語に翻訳されている作品です。
映画をみた人が、気になって読んでみることができる作品というのも良いですよね。映画を通して、本を届けるという意味でもとても興味深く、良い作品だなぁと思いました。エシエンのピュアでまっすぐな感想と合わせて、自分はどう思ったのかと考えてみるのも楽しいかもしれません。さすがユニセフに捧げる映画です。
もちろん本にまつわる話以外にも要素があるので、私は読書に興味がないわ…という人でも作品を味わうことができると思います。とにかく景色が美しいので。街並みを歩いているだけで、ドラマチックに見えるからすごいものです。
よもやま話
図書館司書という仕事をしていたからか、ときたま誤解されることがありますが、私は読書家ではありません。幼い頃はほとんど本を読むこともなく、中学生くらいから漫画を読むようになりますが、小説や実用書を読むようになったのは、図書館関係で働くようになってからです。映画も似たようなものでしょうか。どちらもここ10年くらいの話です。
むしろ今、映画や本に頻繁に触れているのは、若い頃に触れてこなかった、要は後れを取った分を取り戻そうと躍起になっているところがあるのでは…と自分でも感じることがあります。できるだけ そうならないようには注意しているつもりですけれど。
だからか、幼い頃にそういった媒体と触れ合わせてくれる誰かがいたらなぁ…なんて思ってしまう事も。『丘の上の本屋さん』をみていて、リベロのような人に出会いたかったと思いましたし、エシエンが羨ましく思えたものです。でもきっと、その当時にもそういう人はいたのでしょう。私がその手を取らなかっただけなのです。結局はないものねだりというところ。
成人が1ヶ月に本を読む割合ってどれくらいだと思いますか?電子書籍を含めても、だいたい50%くらいと言われていたのが、最近は少し下がって40%くらいなんだそう。
(以上のURLを参考)
本を読む人は2人に1人から、3人に1人になっている今。様々な人が成人の読書量を増やそうと活動をされています。私はそういった方面に詳しくないですし、あまり興味もありません。ただ、もしまた図書館関係で働くとなったときリベロのような人になれたら…と思う自分に気が付きました。
私に なにが できるでしょう?考えながら、日々を過ごしたいと思います。