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シンプリストになりたいのです

映画・JUNK HEAD の感想

ストップモーションといえば、どんな作品を思い浮かべるでしょう?

ストップモーションとは映像の演出技術の1つです。動かしたい物体を1コマ1コマ、ほんのすこしずつ動かしながらカメラで撮影し、本当に動いているかのように見せる撮影技術です。これだけで、いかに大変そうか…というのは伝わるのではないでしょうか。

今回はストップモーション・アニメーション映画『JUNK HEAD』をみました。感想をネタバレ交えて綴っていきたいと思います。

あらすじ

環境破壊が進み汚染された世界。もはや地上で暮らすことはできません。人類は地下世界を開発することを決め、その労働力のため人工生命体 マリガン を創造しました。しかしマリガンには自我が目覚め、人類に対して反乱を起こし戦争が勃発します。その結果、地表よりも深い地下世界はマリガンが支配することになりました。それから1600年の年月が流れました。

遺伝子操作や特化型強化人間の開発技術により、人類は永遠に近い命を手に入れました。しかしその代償として生殖機能を失ったのです。そんななか、新種のウイルスの発生によって人口の30%近くが失われてしまいました。このままでは人類は絶滅してしまうでしょう。

そこで人類は生殖機能について調べるため、地下世界に潜り込みマリガンの調査を開始することになりました。政府が地下世界の調査員を募集したところ、ダンス講師をしていたバートンが名乗りを上げます。

彼は今まで忘れていた”死”と隣り合わせの地下世界を探っていきます。

3バカ兄弟「天国ってどんな所?」

バートン『知らないけどいい所らしいね』

「天国から来たんでしょ?」

『違うよ。上はただの人間が住んでるエリアだよ』

「でも人間は神様でしょ?」

『全然違う』

「じゃあ天国はどこにあるの?」

『良い事して死んだら行けるらしいよ』

「でも人間って死なないんでしょ?」

『下に来て何度も死にそうになったけどね。でも…上に居た時は忘れてたけど今は生きてるって感じがするんだ』

「ふーん」

(作中より引用)

バートン達の冒険はいったいどうなってしまうのか…。

gaga.ne.jp

ちなみにJUNK HEADの上映時間は約99分。そのほとんどを堀貴秀監督が1人で制作したんだそう。数名のスタッフもおられたとはいえ、原案、絵コンテ、脚本、編集、撮影、演出、照明、アニメーター、デザイン、人形、セット、衣装、映像効果…。

ストップモーション・アニメーションということで1コマ1コマ撮影したそうですが、総ショットは14万コマ。制作には7年もの歳月がかかったんだとか。すごいですよね。

(JUNK HEAD : 作品情報 - 映画.com を参考)

感想

多少、グロテスクな表現があるため万人向け映画とはいえません。しかしなんともクセになるダークでユーモラスな作品でした。好きな人にはとことん刺さる作品だと思います。

物語としても面白かったですし、中には可愛いらしいキャラクターもいるんですよ。3バカ兄弟はどこみても可愛いし、ニコが照れるところも可愛いし、バートン(主人公)もどんどんと可愛く見えてくるんですから、もうたまりませんね。

風の谷のナウシカ』もそうですが、ポストアポカリプス一歩手前の世界観は、普段あまりみませんが結構好きだったりします。退廃的な終末世界に取り残された生命がどのように生きるのかに興味があります。平和なところだと『世界の終わりに柴犬と』がおすすめです。可愛いし、笑えるし、泣けます。

話を戻しますが、映画をみているとその不思議な世界に引き込まれていく感覚がありました。ストップモーション作品ということを忘れてしまうくらい作りこまれていて、動きも滑らかでダイナミックなんです。本当にすごい作業量だったんだろうなぁ…と感動しました。

よもやま話

ストップモーション作品といえば、私は幼い頃に見た『ニャッキ』や『ピングー』、『ジャム・ザ・ハウスネイル』、『ロボットパルタ』などが浮かびます。

『ジャム・ザ・ハウスネイル』はクレイアニメ(粘土)で、主人公(?)は家のようなものを背負ったカタツムリです。たまたま製作の裏側を追う番組のようなものをみたのですが、それがとても衝撃的でした。カタツムリが動くとき、地面と接している部分が波打つようにして進みます。カタツムリを少しずつ動かして ヒラヒラを変形させては撮影し、また動かして変形させては撮影し…。そんなふうに撮影しているとは露程も思っていませんでしたから、幼心に なんて面倒な撮影方法なんだ!世の中にはこんなことをする変わった人がいるのか!と失礼ながら思ったことを覚えています。

『JUNK HEAD』の続編は来年公開予定で、前日譚的な物語のよう。X(旧Twitter)では監督自ら作業進捗などをポストされていて、期待がどんどんと膨らんでいきます。

私が幼い頃にみた あの方法で、今この瞬間も作品が作られているのかもしれませんね。